袴について

間が少し空いてしまいましたが、袴について書きたいと思います。
私は和装を始めて丸三年。四年目を迎えています。しかし、袴をはき始めてまだ一年弱です。
きっかけは簡単、木綿のきものを作ったときに、店長である清部さんの袴姿がとても決まっていて、さらに楽そうだったからです。
私は車にほとんど乗らず、普段は自転車に乗っています。以前は長襦袢の下にステテコをはいて自転車に乗っていたのですが、やはり裾がめくれてステテコが見えるのは恰好良い物ではありませんでした。そこで普段履き用に木綿の細袴を仕立てて、大学へ通う時にはくようになったのですが、そのあまりの楽さと(自分で言うのも何ですが)恰好良さに、ここ一年は家にいる時もほぼ毎日愛用しています。正絹の袴も一応数枚持っていて、映画や観劇、あとは学会などそこそこ正式な場所へはこれを履いていきます。
とにかく言いたいのは一つ、袴はとってもお薦めです。和服の「動きにくい」「裾捌きが煩雑」「自転車、自動車の運転がしにくい」といった欠点を全て解決してくれます。あと、男の和服姿はやはりとっても恰好良い物なのです。
では、そんな袴の入門について書きたいと思います。

  • 袴の種類

袴の発祥は飛鳥時代以前にまで遡ると言われ、今の形状になったのは鎌倉〜室町初期とのことです。そして、その後朝鮮・中国の宮廷服の色彩・形状を取り入れ、また日々の生活の必要性から様々な形状が産まれました。とりあえず、現在男物として通常売られているのは次の4種類です。

  • 馬乗り袴

要は、股下が別れているものです。剣道や弓道の道着として使われているのはこちらです。後述する行灯袴よりもずっと動きやすいですが、アイロンがけなどは少し面倒かも知れません。バイクや自転車に乗る場合はこちらでなければほぼ無理でしょう。

  • 細袴

馬乗り袴の裾を細めに仕立てたものです。正装には向きませんが、ものすごく動きやすいです。細袴を木綿で何本か仕立てておけば、普段着には困らないです。

  • 行灯袴

股下が別れていない、スカート状の袴です。幕末に略式として生まれたそうです。女物の袴はほぼ全てこれですね。巫女さんや、昔の女学生が履いているような感じのものです。股下が別れていないためパッと見が優美で、しかも履きやすくトイレも楽です。しかし、要はロングスカートですから、裾捌きは馬乗り袴よりも悪くなります。個人的には行灯袴はあまり好きではないです。礼服としてしか着ない、というのであれば悪くないですが、普段着向きでは少なくとも無いですね。
ちなみに明治維新直後はまだほとんど馬乗り袴しかなく、女学生も馬乗り袴を履いていたそうです。しかし、若い女性が男装まがいの恰好をするのは良くないということで、華族女学校(現学習院女子部)にて宮廷服やスカートを元に女物の行灯袴が考案されました。ちなみに色は葡萄茶色で素材はカシミア。これは当時の女学生の間で大流行したそうです。

  • 野袴

黄門様が履いているような、ほぼズボンのような形状をしている袴です。文字通り長い時間歩いたり、畑や山に出る時に履く袴です。個人的には一本欲しいと思っているのですが、まだ持ってないです。

  • 袴のサイズ

袴を買う時のサイズの測り方ですが、よほど太っているか、痩せているかしない限り、胴回りとかは関係ありません。問題になるのは紐下のみです。
紐下というのは文字通り紐から下の長さです。
袴の紐は通常腰骨のあたりで締めますから、腰骨から足下くらいまでの長さを参考にすればいいと思います。162 cm 、72 kg で短足気味の私の紐下は78〜80 cm といったところでしょうか。

  • 袴の素材

袴にも様々な素材のものがあります。木綿・ウール・絹・化繊などです。
個人的には、普段履きには木綿、準正装・正装時には正絹を履きます。袴はどうしても裾が汚れやすいので、洗濯機で洗える木綿袴は非常に便利です。武道経験者で木綿の武道袴を持っている人は最初はそれを着物の上に履いてみるのも良いでしょう。化繊は静電気で裾捌きが悪くなりがちなのでお薦めしません。ウールは、生地が重く履き心地が余り良くない印象があります。
古着であれば、木綿なら数千円、正絹でも紬や仙台平などの高級品を除けば一万円以下で落札出来ると思います。

それでは次回は男の和服入門書を紹介したいと思います。数こそは少ないですが、参考になる本は何冊かあります。
あと、今日は緑の片貝木綿に青いセーター、白茶色の木綿袴です。