親指キー独立の必要性

 今日は、99%親指シフターにしか理解できないことを書きます。
 先日発表された新型親指シフトキーボードだけど、親指キーと変換・無変換キーが独立型でないのが本当に残念。思えば、リベルタッチのマイナーバージョンとして登場したFMV-KB232も親指キーと変換・無変換キーは兼ねる形になっていた。富士通としては、今後はUSBキーボードは据え置き型にしろ、携帯型にしろ、非独立型が主要になっていくのだろうか。
 一応ここで親指シフトキーボードの特性について説明しておく。
 親指シフトキーボードというのは、一般的に次のような構造をしている。

 一般的なSHIFTキーとは別に、親指シフトキーなるものが存在し、それを利用することで一つのキーに三つの仮名を割り振っている。日本語はイロハ47文字に加え、濁音・半濁音25字、撥音「っ」、拗音「ゃ・ゅ・ょ・ぁ・ぃ・ぅ・ぇ・ぉ」、さらには「ヴ」の82文字で構成されているが、その全てがアルファベット入力と同じ中段三段での1ストローク入力が可能になっている。
 ワープロ時代はかなりのシェアを勝ち取ったが、パソコン時代が到来してからはデファクトスタンダードOSのWindowsが正式サポートしなかったこともあって、あっという間に過去の遺物にされてしまった。だが、私も含めて愛好者はまだまだ根強く生き残っている。ちなみにこの辺の経緯に関して、「富士通が特許を主張したためにサードパーティから他機種が出なかったことがその要因」といったデマが横行しているがそんなことはなく、むしろその普及を図っていたことをここに記しておく。
 話を元に戻そう。私が問題にしたいのは直近の二つのキーボードが親指キー非独立型であったことだ。非独立型というのは親指シフトキーと変換・無変換キーが兼用となっていて、キーボードの省スペース化に一役買っている。ただ、オールドユーザーとしては使い勝手の面で色々と問題があると言わざるを得ない。新キーボード発表の後、独立型愛用者からの反発があるかと思ってたが、ネットでの反応は概ね好評のようだ。ちょっと個人的には信じられない。
 親指シフトキーボードの利点として、日本語入力に特化した上でアルファベット入力(とくに英語入力)はそのまま通常の英語キーボードと同じ、という点が揚げられる。
 ここでJISキーボードと英語キーボードの説明をしよう。

 JISキーボードというのは、わかりやすく言えば一般的にこの国で出回っているキーボードのことだ。そのキーの数から109キーボードと呼ばれることも多い。キートップにアルファベットと仮名の両方が刻印してあり、何よりも「変換・無変換キー」が無遠慮にスペースキーの横に鎮座している。要は、アルファベット入力と仮名・漢字入力をとりあえず可能にしてあるわけだ。
 英語キーボードとは文字通り英語圏で使われている一般的なキーボードで、漢字変換の必要がないことから当然変換・無変換キーが存在していない。基本的にはコンピューターを使う上で最小編成のキーボードであることからプログラマーなどからの支持が高いキー配列だ。
 JISキーボードの最大の難点は、変換・無変換キーが再下段、スペースキーと同じ行に存在するところにある。変換の必要がない英語入力時に変換・無変換キーは全く使用しないし、ローマ字入力の際もスペースキーを変換キーの代わりに用いているユーザーがほとんどだと思う。さらには、英語入力時にはスペースバーの短さが致命的と言えるほどに使い勝手を悪化させている。
 この点から、変換・無変換キーが非独立型のキーボードは「親指シフトキーボードで英語を入力することもある」ユーザーを完全に切り捨てていることが分かる。単語ごとにスペースを入力しなければいけない英語を、スペースキーが非常に狭く、しかも再下段のど真ん中に(英語入力時には)決して使うことがない変換・無変換キーが存在するキーボードで入力するなんて考えるだけでゾッとする。
 反って、変換・無変換キーが独立型の親指シフトキーボードはその辺の問題が一切無い。
 例えば私が使っているKB-611は独立型だが、親指キーが再下段中央にそびえ立っていて、無変換・変換キーはその下にややキートップが低い状態で鎮座している。これがどういうことかというと、押そうと思えば簡単に押せるし、使わないと思えば徹底的に無視することが出来る。そしてスペースバーは親指キーの右に小さく存在している。さらには、英語入力時には親指シフトキーはスペースバーとして動作する。
 このことによる利点は二つだ。

  1. 日本語入力時に、変換・無変換キーが押しやすい。そして、日本語入力時にはほとんど使わないスペースバーが隅っこに寄っていて煩わしくない。
  2. 英語入力時に変換・無変換キーの存在感が全く無い。さらには、親指シフトキーがスペースバーとなることで英語キーボードに近いキー配列になる。

 最近は親指エミュレータのユーザーや、ローマ字から親指シフトに転向するユーザーが多いせいか*1、この利点が見失われている気がする。私は初めて触ったワープロOASYS、初めて触ったパソコンがTOWNSという純正富士通ユーザーなので、昨今の親指シフトの方向性にかなりの違和感を覚えている。親指独立型が日本語仮名入力と英語入力両方をかなり合理的にこなすことが出来るということは、もう少しひろくアピールして良いんじゃないかと思う。
 親指エミュレータから入ったユーザーにも、できれば独立型の使いやすさをどこかで味わって欲しい。

*1:スペースバーを変換キーとして使用することになれたユーザーは、日本語入力時にスペースが不要であると言うことにまず気付かないであろう