能登の商業捕鯨復活を熱望する

http://www.hokkoku.co.jp/subpage/HT20090314401.htm
 国内で漂着、捕獲されたクジラの報告をまとめた日本鯨類研究所(東京)の記録「ストランディングレコード」によると、昨年の石川県沿岸でのクジラの報告数は二十四頭で、二〇〇四年の十二頭から倍増した。能登町の定置網には今年に入って五頭のミンククジラが入り込んでいる。関係者の間では、日本の沿岸捕鯨の本格再開へ期待が高まっている。


http://mediajam.info/topic/825720
 IWC作業部会がまとめた妥協案は、網走(北海道)、鮎川(宮城県)、和田(千葉県)、太地(和歌山県)の4カ所から5年間、ミンククジラの日帰り捕獲を暫定的に容認。南極海での調査捕鯨については(1)5年で段階的に廃止(2)捕獲頭数を減らし5年間継続−の2案を併記。北西太平洋での調査捕鯨も縮小する。


http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2009031202000104.html
 IWCの作業部会が先月発表した「日本が南極海などで実施している調査捕鯨を段階的に大幅削減するか全廃する代わり、日本の沿岸捕鯨を認める」という妥協案が注目されていたが、日本は調査捕鯨全廃は受け入れられないと主張。環境保護団体シー・シェパードによる日本の調査捕鯨船への妨害活動を非難する声明を発表した。

 先日ニュースになったが、あまり盛んには報道されなかったので、ここにメモとしてまとめておきたい。
 一行でいうならば「近海商業捕鯨の復活に光が差したが、まだまだ課題は山積み」ということだろうか。ただ確実なのは、日本の沿岸捕鯨が伝統捕鯨の一面を持つことが少しづつではあるが、認められてきているという点だろうか。ただ、日本の全体捕鯨頭数を削減するための妥協であることも忘れてはならない。
 いちおう私の意見としては、IWC作業部会の提示した譲歩案を評価しつつも、水産庁にはこの提案にホイホイと賛成して欲しくない。
 理由はいくつかあるが、一番大きな問題は、クジラの生態は未だ分かっていないことがたくさんあるのに、日本近海のクジラのみを捕ることは予想できない負荷を与える可能性がある、ということ。もしかしたら日本近海にのみ存在する亜種の集団がまだいるかも知れない。或いは、日本が南氷洋での捕鯨を完全に辞めることで、反って悪影響を与えるかも知れない。
 もう一つは、この妥協案を飲むことで、未来永劫上に挙げられる四地域以外での捕鯨が出来なくなる可能性がある、といこと。実はこの四地域、ミンククジラの伝統捕鯨として挙げるには突っ込みどころ満載である。まず太地(和歌山)と和田(千葉)だが、ここで現在行われている伝統捕鯨は主にツチクジラ漁であって、ミンククジラは捕獲されていない。ちなみにツチクジラはIWCの管理課には入っておらず、今更IWCのこの案を飲む必要はない。鮎川(宮城)も同様で、ここで行われているのはイルカ漁で、やはりミンククジラの捕鯨は行われていない。網走(北海道)での捕鯨蝦夷地開拓の本格化した明治・大正以降に始まったもので、伝統捕鯨と言えるかどうかは疑問が残る*1
 その反面、日本で最も古くからミンククジラ漁が行われている地域の一つである、能登町(石川県)が含まれていない。能登町では藩政期以前からミンククジラ漁が行われている。現在でも、定置網で混獲されたり、湾岸地域に漂着したミンククジラの捕獲が行われている*2北國新聞の記事では去年の水揚げは24頭ということで、月に2頭が県内に流通していることになる。
 これでは、「本来の伝統捕鯨が行われている地域をあえて指名しないことで、伝統が自然消滅的に廃れるのを待っているのでは」と勘ぐってしまう。まあ、おそらくはそんなことではなくて、やはりまだまだ日本の伝統捕鯨に対する理解が足りないだけだとは思うが。
 なにはともあれ、日本の主張としては「伝統捕鯨と漁民の生活を守る」という建前があるのだから、それに則りこの提案に関して慎重に議論して欲しい。

*1:縄文時代の遺跡からクジラの骨が、といった記述がよく見られるが、個人的には文化的にどこまで地続きなのか疑問がある。それに、食用にしていたという証拠もない。もしかしたら、漂着した骨を利用していただけかも知れない。

*2:定置網での混獲は例外的に認められている。石川県ではまだクジラは日常食として食されていて、能登でクジラが水揚げされた日は県内のスーパーはちょっとしたクジラ祭りになる。