春を告げる酒


 以前、宗元のにごり酒を紹介するときに「冬を告げる酒」と紹介しましたが、では「春を告げる酒」というと、この二銘柄を押したいです。その二銘柄とは、「白菊 純米吟醸 おりがらみ生酒」と「池月 吟醸 みなもにうかぶ月 ふな掛けあらばしり」です。
 白菊を醸しているのは輪島の白藤酒造。奥能登で少量生産ながら、確かな品質の酒を造り続けています。この酒と出会ったのは金沢に来てすぐで、それ以来、毎年この時期に出荷される生酒を楽しみにしています。いつもは市内の酒屋で買っているのですが、今年は宮崎さんで買いました。1升3,500円と、いつも飲んでいる日本酒よりも割高なのですが、それを遙かに超えておいしい吟醸酒です。今年の出来も例年通り、上々の日本酒です。甘口で味も濃く、どんな肴にも合う万能酒です。今日は輪島産の能登鯛で飲みました。
 対して池月を醸す烏屋酒造は能登半島の中程、中能登町の酒蔵。近所のふじた酒店で買いました。1升3,150円。このお酒は、入学以来本当に毎年楽しみにしていて、今年も2月のうちから入荷日を酒屋の旦那に聞いて、肝臓の調整をしていました。実は先々週に受けた健康診断で肝機能が少しやばいことになっていまして、イベントを除いて禁酒していました。今日献血する際に肝機能に問題が無く、現在久しぶりに浴びるように飲んでいます。
 普段池月は本醸造と純米しか飲んでいないのですが、この時期の生酒だけは吟醸を飲みます。烏屋酒造ですが、非常に小さな蔵でして、今でも昔ながらの酒造りを続けています。ふな掛け、というのは昔の酒を絞る行程のことです。昔は舟形の容器を使って酒を絞っていました。それで、酒を絞ることを舟掛け、と言ったのです。あらばしりというのはその酒を絞る際に、一番最初に出てくる部分のことです。瓶詰めする際に、タンクの底にたまっている味の濃いところから出てくるので、非常に貴重なおいしい部分です。烏屋酒造ではこの時期、レギュラーボトルと同じ値段でこのあらばしりを出荷しています。本当に凄いことだと思います。今年はすっきりとした味わいで、冷やして飲むと本当においしいです。白菊のような万能酒ではありませんが、塩と水を片手に飲むと、このお酒の本当のおいしさが分かると思います。