うわー、ひどい話だ(褒め言葉)

秋期限定栗きんとん事件 下 (創元推理文庫 M よ 1-6)

秋期限定栗きんとん事件 下 (創元推理文庫 M よ 1-6)

 金沢大卒の星、米澤穂信の最新刊。上巻との二ヶ月連続刊行。米澤氏は97年入学だと思うので、99年入学の私とはどこかでニアミスしている可能性もあるわけか。そう考えると、少し誇らしくもあるから不思議だ。
 すでにここここに秀逸な解説があるので、私がわざわざ書くことでもないのだが、ちょっと今回は心底面白かったのでとりあえずの感想を書いておきたい。
 ネタバラしを含むかもしれないので、念のためたたみます。
 上巻の感想で、「新しいパートナーとかみ合っていない」と書いたけど、そんなもんではなかったね。二人とも。特に小鳩君のディスコミュニケーションっぷりが酷い。仲丸さんへの無関心っぷりは外道の域だ。まだ彼氏のために(的外れだけど)少しは頑張っていた小山内さんの方がマシだ。
 しかし、タイトルにもなっている栗きんとん、途中何度か言及されるマロングラッセがなかなかお話に絡んでこないのでどうしたのかと思っていたら、なるほどこういう意味だったのね。今回も小市民を偽装することに失敗した二人は、きちんと甘いお菓子になれるのか、多分なれないんだろうな。
 しかしミステリ的に見ても今回はかなり面白かった。シリーズ三作目ともなれば、小山内さんが実は裏で不気味に暗躍しているのは読者も織り込み済みなので、どうやってミステリ的サプライズを盛り込んでくるのかとそちらをメインで読んでいたんだけど、まさかラストでああなるとはね。小山内さんの不興を買っただけで、あそこまでけちょんけちょんに磨り潰されてしまった瓜野君には同情すら覚える。瓜野君にあそこまでの仕打ちをした小山内さんと、再び行動をともにすることにした小鳩君の肝の太さはちょっと凄いかも。普通、怖くて一緒にはいられないでしょ。
 後は、二人が恋愛関係になることはまず有り得ないと思うんだけど、人非人である二人が一緒にいる方が反って抑止力になると思うので、いつまでも一緒にいてください。本当に。