雨の金沢


金沢は今日は一日雨でした。
私は雨の日は加賀番傘を咲かせています。「傘を咲かせる」というのは金沢では最後の一人になってしまった和傘職人、松田弘さんの言葉です。私の使っている番傘も松田さんの作った傘です。
九谷焼によく見られる緑青色の縁取りに生成の丸。雨夜にも関わらず、まるで空に月が浮かんだような風情になります。


松田さんは今年84歳。金沢のおそらく四百年近くになる和傘の歴史は、今静かに幕を下ろそうとしています。
しかし、弟子ではない(松田さんは弟子を取らない主義です)のですが七十年の職人人生でただ一人、その技を受け継いだ方がいます。若手和傘職人、間島円さんです。彼女は金沢美大在学中に、(弟子ではなく)共同制作者として四年間和傘作りを学び、数年前に独立したそうです。
残念ながら金沢に工房があるわけではないのですが、確実にその技は次世代に受け継がれているのです。関東に帰省した際にギャラリーに展示してあるのを見たことがあるのですが、素晴らしい和傘でした。

当然ですが、松田さんもまだまだ現役です。店を兼ねた工房に行けば、いつでも笑顔で出迎えてくれます。私は松田さんの傘を二本(番傘と女物の蛇の目)持っているのですが、なんとか金沢にいるうちにもう一本欲しいと思っています。
ちなみに値段ですが、サイズや施されている細工にもよるのですが二万円〜六万円程度です。高い物になると友禅作家さんによる手書きデザインになります。
また、金沢でもそうですが、京都などの観光地で二千円程度で売られている和傘をよく見かけます。しかしそのほとんどは中国製、しかも形を似せただけの工場生産品です(当然、ちゃんとした唐傘もあるにはありますが、やはり良い物はそれなりの値段です)。デザインだけでなく耐久性や使い勝手に至るまで、匠の技で作られたものには到底及びません。二万円と言われると高いと感じるかも知れませんが、一生物だと思えば安いものです。

下は松田和傘店の地図です。


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