家族の庭

80点

シネモンドで鑑賞。
観ている間中、(ノ_-;)ウヘェ… と凹む。
先日の「ヤングアダルト」といい、最近の映画界は中年独身女性の痛々しさを描くのが流行っているのか?

トムとジェリーの老夫婦と息子のジョーは良好な親子関係を築いている。トムは地質学者、ジェリーは病院でカウンセラーとして働き、ジョーも若き弁護士として充実した人生を送っている。
彼らと対照的に描かれるのが、ジェリーの20年来の親友・メアリー。ジェリーの同僚(事務員)で、50代独身。喫煙者で家事はほとんどしない、それなりに楽しい人生を送ってはいるが、常に寂しさを抱えている。
メアリーはジェリーと家族ぐるみの付き合いをしているが、彼女のとある問題が彼らの人間関係に闇を落とし始めて・・・。

メアリーのキャラが凄い。マシンガンのように自分の話しかしない。とにかく他人への思慮に欠け、自分が未だにキュートだと疑わない。ジェリーと同世代と言うことで、おそらく50は過ぎていると思うのだが、「私って若く見られるのよ」などと言いながら、ジェリーの息子ジョーにまで色目を使う始末。
もっとも、このジョーへの恋慕が原因でジェリーとの友情が壊れてしまうのだけれど、自業自得以外の何ものでもないように描かれているため、あまり同情の心は沸いてこない。
とにかく、このメアリーの痛々しさがとことん描かれるので、見ている間本当にしんどかった。確かにこんなおばさんっているよなあ、とも思うし、何よりもこのメアリーの姿は(現在独身で、結婚の予定どころかパートナーもいない)私の将来の姿でもあるのでは、とも思えてなんとも切なくなった。

メアリー以外の登場人物も、ほぼ全員端役に至るまで幸せな家庭や家族関係を持っている人間は皆無で、ジェリーの幸福とそれ以外の人々の惨めさのみが繰り返し描かれていく。しかも、その惨めな人々は明らかに負の要因(飲酒・喫煙・肥満・KY・低学歴)を背負わされており、「ま、自業自得だよね」と思わせるような仕掛けになっていて、登場人物に救いの場を与えない。
しかし、セリフや行動の端々に垣間見える彼らの人生には共感を覚えるし、何よりも理想のライフスタイルを送れている人なんていない。彼らの姿は観客である私たちの鏡写しでもある。

だからこそ、ラストシーンでのメアリーの表情が胸に残る。そして、終盤での一つの出会いが微かな希望であり、さらにはこの映画の原題は「Another year(別の年)」なのだ。この映画はとある一家とその周囲の人々のとある1年を切り取ったに過ぎず、「Next year」には幸福が待っているのかもしれない。
人生はどうなるか分からない。