「しあわせのパン」

40点

 ユナイテッドシネマ金沢で鑑賞。

 北海道・洞爺湖のほとりの小さな町・月浦を舞台に、宿泊設備を備えたオーベルジュ式のパンカフェを営む夫婦と、店を訪れる人々の人生を四季の移ろいとともに描いたハートウォーミングドラマ。りえ(原田知世)と尚(大泉洋)の水縞夫妻は東京から北海道・月浦に移住し、パンカフェ「マーニ」を開く。尚がパンを焼き、りえがそれに合ったコーヒーと料理を出すマーニには、さまざまな人々がやってくる。

 うーん、、、惜しい!
 雰囲気は凄く良い映画なんですよ。主演の2人はハマっているし、北海道の風景も美しい。脇役もキャラが立っている。
 だけど、映画として「足りていない」部分と「過剰な」部分が多くて、感動を阻害する大きなノイズになってしまっている。
 最大のノイズは大橋のぞみによるナレーション。まず大橋のぞみが舌っ足らずで、ナレーションが流れる度にイラッと来ます。もうそこそこの歳(12歳)なんだから、そういう芸風止めようぜ(まあ、芸能界そのものを引退してしまったわけだけど)。ナレーションの内容も、ちょっと説明過多。すでに画面で十分こちらに伝わってきている内容を、あの舌っ足らずなナレーションで二重に説明されるものだから、本当にイラつきました。
 料理のシーンも出てくる料理(特にパン!)ももの凄く良いんだけど、役者、特にあがた森魚の食べる演技がわざとらしくて、これまたイラッと来る。グルメ番組じゃ無いんだからさあ・・・。せっかく良いキャストを揃えたんだから、もっと押さえた感じで良かったんじゃないかなあ。
 足りない部分としては、もう少しみんなの生活感を出すべきだったと思う。近所の農家を営む夫妻も、青空市場で野菜を売買するんじゃなくて、広大な畑を耕しているところに直接買いに行くという風にするとか、せっかく薪ストーブを使ってるんだから薪を割るシーンを入れる、とか。とにかく北海道で地に足着けて生活してるんだ!、という説得力が欲しかった。なんかもう、「都会の人が夢みる田舎生活」みたいな感じで、もの凄く気持ち悪い。
 同じような感じで、ディティールの作り込みもかなり甘い。夏のシーンで、バイクがガス欠して押して歩くくだりで、途中そこそこ民家が存在するところを歩いている。確か、カフェの廻りは湖と広大な草原が広がっていたはずだけど、その住宅地はカフェからどのくらい離れたところにあるの?なんか、5キロや10キロじゃきかない気もするんだけど、そこから押して帰るつもりだったの?まあ、途中でスタンドか何かあるんだろうけど、なんか唐突に住宅地が出てきてびっくりする。駅とバス停の場所とか、なんか地図がおかしいことになってない?そもそも、あがた森魚演じるあの紳士は、どこに住んでいてどうやって月浦のバス停まで来ているの?
 あとは、「お金」というものが一切登場しないんですよ。カフェ、という飲食店が舞台で、さらにいろいろ物の遣り取りはするんだけど、現金が一切出てこない。唯一現金が出てくるのは夫婦の貯金箱のみ、という徹底ぷり。なんかねえ、気持ち悪いよ、それ。「都会の人達が夢みるファンタジーとしての田舎」にとって「現金」がノイズになる、と作り手は思ったんだろうけど、、、。田舎舐めんな。ちょっと田舎と観客をバカにしすぎ。逆に、生活感がもの凄く希薄で、映画の質を低くしている。

 というわけで、雰囲気は良いのだけれど、それだけの空っぽな映画でした。オススメはしません。