あなたにとって「料理」は食べるものですか?作るものですか?

http://movie.goo.ne.jp/contents/news/NFCN0034448/index.html

 ジブリ最新作「コクリコ坂から」は傑作だと思うんだけど、個人的に一番感心したのは料理を作るシーンがくり返し、もの凄く丁寧に描写される点。
 個人的には、世間で言われるほど、私はジブリの(とりわけ宮崎駿の)描く料理に感心しません。正直、その描写に貧しさと卑しさを見てしまって不愉快になる。
 だって、出てくる料理が悉くジャンクフードなんだもの。ナポリタンスパゲッティや肉の塊、肉団子のスープにあげくは即席ラーメン。しかもそれをガツガツと食べる。しかも、そんな描写を「活きる能力の現れ」とか言ってしまったりする。後は、料理をするシーンがあまり出てこないのも不満。登場人物達は、出されたジャンクフードをガツガツと食べるだけです。それって、どうなのさ?
 おそらく、駿にとって料理というのは「食べるもの」で「作って貰うもの」であり、決して「作るもの」ではないのでしょう。だから、食事のシーンというと決まってガツガツと食べるばっかりになってしまう。日本の古い男性特有の「メシ・フロ・ネル」が透けて見えてしまう。それって、文化的にも映画的にも貧しいと思う。
 その点、「コクリコ坂から」における料理の位置づけは、「食べるもの」ではなくて「作るもの」なんですよね。冒頭でも、作るシーンはねっとりと描写するのに食べるシーンはあっさり。食事のメンバーもさも当然、という感じで「おいしい」の一言も無し。つまり、あの世界において食事の準備にあの程度の手間がかかるのも、あの食事そのものも日常のワンシーンでしかないわけです。
 あれだけ手間暇をかけて目玉焼きと味噌汁を作る、というかあれだけの手間をかけてもその程度の料理しか作れない。これは、私も含めた自炊派の人にとっては当たり前のことなんだけど、その当たり前のことを真正面から描写して見せた宮崎吾郎の映像作家としての誠意に感服します。
 でも、世間の映像作品やマンガ、小説などを見渡すと概ね料理というものは「作る人」と「食べる人」に二分されているような気がする。
 あなたにとって料理とは「作るもの」ですか?「食べるもの」ですか?