良くも悪くも「普通の映画」。ただし油断していたらラストでガツンと来た

サイタマノラッパー2

 シネモンドにて1に引き続き鑑賞。
 一作目の成功のためか、明らかに予算が増えて「普通の映画」になっていた。しかし、あの得体の知れないパワーは少しトーンダウンしてたかなあ。規格外の傑作だった前作と比べると「ただの傑作」になってしまっていた気がする。

 一作目の主人公、IKKUとTOMの二人は伝説の竹田先輩ゆかりの土地、群馬におとずれる。訪れたのはこんにゃくと温泉、ソープ街しかない片田舎。しかしそこにはかつて竹田先輩に触発されたガールズラップグループ「B☆hack」の元メンバーたちがいた。
 こんにゃく屋の跡取り娘アユム、男に貢ぐソープ嬢マミー、倒産寸前の温泉旅館の娘ミッツー、地方議員の娘ビヨンセ、走り屋のクドー。リーダーのアユムはB☆hackを再結成し高校文化祭以来のライブを実現しようとするが・・・。

以下ネタバラシを含むので白黒反転

 粗筋はまんま一作目と同じ。金も未来もない若者が、燻りながらもhip-hopに謎の活路を求めさまよう。
 なんだかんだで家業や定職がある人達が主人公な上に、前作よりは明らかにお金がかかっているためか一作目ほどの閉塞感はない。「へたくそな日本語ラップ」の滑稽さ、イタさもガールズグループということでかなり薄められてる。
 だけど、ラストのラップシーンは油断していたせいもあってガツンときた。母親の3回忌に思いの丈をぶちまけるアユム。娘のラップに対して「人間そうやって生きていくしかねえんだよ」と静かに厳しく言い放つアユムの父親。肯きも、反論もしないアユム。そしてラストのエピローグでこんにゃく作りに励むアユムとhip-hopに少しだけ理解を示す父親。一作目と比べるとかなり優しいラストに涙が止まらなかった。

 1もそうだったけど、結局彼女らの社会的経済的な問題は何一つ解決していないんだよね。アユムはライブを開くことは出来なかったし、ミッツーの旅館は差し押さえられたままだ。変わったのはアユムが少し前向きになっただけ。しかし、私はこのラストが非常に好ましい物に思えた。好きだ、というよりもリアルだ、と感じる。一つや二つのイベントでは、一人の人間を取り囲む状況なんか変わりはしない。現実はゲームではないのだから。ただ、彼女たちは社会に対して怒りを表すということを思い出した。世界に対して(例え独り相撲に過ぎなくとも)刃向かう術を手に入れた彼ら彼女らは、きっとこれからも大丈夫。そう思わせてくれるラストだった。
 あと、アユム役の山田真歩は非常にキュートな役者だと感じた。これから注目していきたい。