ボクシングシーンが素晴らしい


 李闘士男がボクシング映画を撮る、というだけで期待度マックスだった本作。期待を裏切らない出来だった。 ここ二日間で紹介した映画の中では、最も爽快感に溢れた娯楽大作。DVDが出たらもう一度、いや三度は見返してみたい。
 李闘士男は「お父さんのバックドロップ」で注目され、「デトロイト・メタル・シティ」でヒットを飛ばした期待の新鋭。特に「デトロイト・メタル・シティ」はあの原作の空気をそのままに爽やかな青春映画に落とし込むという快挙を成し遂げた。
 そしてこの「ボックス!」だけど、最初から最後まで直球勝負。お父さんのバックドロップみたいなB級感やデトロイト・メタル・シティの軽快なギャグも無し。とにかくど真ん中のスポ根青春グラフィティ。
 そして、そんな監督の熱意に市原隼人は満点の役作りで応えている。ちゃんとジムに通って体を作っていたのが分かるほど引き締まった身体を晒して、工夫たっぷりのカメラワークも手伝って素人とは思えないボクシングシーンを展開してくれる。ロッキー・ザ・ファイナルを観たときに、スタローンの肉体と役作りを観て「日本でこれは無理だな」と思ったけど、いやはや日本の俳優も捨てたもんじゃない。日本の数々のスポーツ映画は、この熱意を少しは見習って欲しい。
 ここ数年、20代の役者が次々とスマッシュヒットを飛ばしていて嬉しい限り。日本の映画界を盛り上げるためにも、如何に彼ら彼女らに活躍の場を与えられるかにかかっていると思う。脚本・演出・役者、人材は揃ってきている。後は資本とスクリーンを用意してやるだけなのだ。
 そういえば、「書道ガールズ」も女優達に書道のトレーニングを課し、書道シーンは全て女優本人のモノだった。ようやく、日本の映画界もそのへんのリアリティの大切さに気付いたのかもしれない。