古き良き日本映画の伝統


 傑作。実は広末と蒼井優を観に行ったんだけど、映画の出来が予想以上に良くて良い意味で裏切られた。監督は「ガチ☆ボーイ」の小泉 徳宏。ガチボーイも非常に良くできた映画だったけど、いきなりのビッグプロジェクト大抜擢。しかもこの人私と同い年なんだよね。もしかしたら、一生日本映画に困らないかも。とにかく今後に期待の若手監督。
 とある一家の、昭和から平成に渡る三世代の女の物語。三世代六人の女性を、蒼井優竹内結子田中麗奈仲間由紀恵鈴木京香広末涼子が演じるという超豪華映画。
 この映画を観た人の感想は、大まかに「こういう映画を観たかったんだよ」という層と、「なんか退屈だった」という層に分かれると思う。ちなみに私はバリバリ前者。
 日本映画の伝統の中に、「さりげない日常の機微を鋭くフィルムに落とし込む」「とにかく女優を美しく撮る」というのがあると思うんだけど、この二点に関してほぼ完璧な映画だった。
 お話以上に女優を観る映画だと思うので雑感を箇条書きで。
(ネタバラシを含むので畳みます)
蒼井優
 昭和11年を舞台にただ一人白黒画面を担当。和服姿が非常にチャーミング。和風の仕草・立ち居振る舞いが非常に堂に入っていて蒼井優パートを観ただけで個人的に値段分楽しんだ。映画関係者は今すぐ蒼井優に時代劇超大作を用意するように。
.竹内結子
 昭和39年、蒼井優演じる凜の娘役・薫を担当。この人のパートはちょっと浮いていたかな?夫を若くして亡くした未亡人役。笑顔が悲しくも美しかった。
田中麗奈
 薫の妹・碧役。浴衣姿がとても魅力的。お姉さんとは対照的に明るいお話。老作家との遣り取りが楽しかった。その魅力や力量に反して作品に恵まれていないイメージが強いけど、この作品が新たな飛躍の切っ掛けになって欲しい。
仲間由紀恵
 昭和50年代担当。三人姉妹の三女・慧役。昭和39年パートでは登場せず。この人、実はあんまり好きじゃなかったんだけどちょっとイメージ変わったかも。ああいう演技も出来たのね。この映画のテーマを一番背負っている役でもあって、予告編を見たときは何で仲間由紀恵なんだろう、と思っていたんだけどカワイらしい奥さん役をそつなく、そして力強くこなしていて納得。このカワイらしさと力強さを同時にフィルムに焼き付けられるのはこの人ぐらいかもしれない。
鈴木京香
 舞台は現代。叔母である薫に次いで重い背景を背負った女性・奏役。20代〜30代前半の女優の中で、42歳のこの人が放つオーラはすさまじい。そして奏が下す結論がラストになってずしりと効いてくる。
広末涼子
 昭和55年生まれの私はなんだかんだでこの人がスクリーンに出てくるだけで嬉しくなってしまう。私は理系クラスだったので関係なかったが、知り合いで早稲田の教育学部受けた人間が何人いたことか。この人の生まれ持った天真爛漫さが、最近ようやくスクリーンで活かされるようになってきた気がする。