傑作なのは間違いないのだが・・・

WHITE ALBUM VOL.1 [Blu-ray]

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 原作は遙か昔にプレイ済み。
 先日、ハルヒを一緒に観に行った後輩から、「栗原さん以外には絶対に薦めませんが、栗原さんは観ておいた方がいいと思います」「平野綾水樹奈々のベストワークは間違いなくこれです」などと、なんとも不穏なオススメをされたので思わず観てしまった。
 んで、とりあえず今6話まで観たんだけど、確かにこれは・・・。いや、個人的には傑作だと思うんだけど、他人に勧める気には絶対になれない。
 でも本当に傑作だよ、これ。というか、このアニメを傑作ということにしておかないと、褒めるべきアニメなんか今一本もないことになってしまう。もの凄くレベルの高いことを平然と行っている。高い作画レベル、徹底的に意思統一された演出、完全に再現されたトレンディドラマテイスト。ただ問題なのは、「これを面白がるような人間に届ける方法がアニメ界に存在しない」という一点のみ。いや、ネットをちょっとさらってみてもみんなの感想が酷すぎる。「見ていて心地よい作品じゃない」「キャラの会話が淡々としすぎてて退屈」「様々な演出があまりにもベタ&鼻につきすぎ&強調しすぎですべて台無し」、etc.。えっーと、そこって全部あえてやってるところだし、お客としても楽しむべきところでしょーが!
 作品の一般性や普遍性とかは、ハルヒやなのはよりもよっぽど高いと思う。吉成鋼のキャラデザもいわゆるアニメ絵からは少し離れて、あえて今の流行を取り入れてないし、演出もアニメ的なオーバーアクションは少なめで、軸足そのものはリアルな日常芝居に置いている。そして、こういったリアル側に軸足を残した実写風テイストの作品が売れないのは「true tears」の惨敗を見れば火を見るより明らか。
 うーん、しかし惜しいなあ。せめてあと十年早く作るか、あるいは時代の潮目が変わるのを待ってから作れば、もっともっと評価されただろうに・・・。まあ、作品の善し悪しと商業的な成功は必ずしもリンクしないという好例がまた一つ、ということなんだろうね。
以下、各話感想。
1話「そう、あの時はもう、スイッチが入ってたんじゃないかなぁ」
 冬弥と由綺のすれ違い、あとは「スイッチが入ってしまったのは一体誰なんですか?」というお話。冬弥も由綺もお互いに押しの弱い性格で、関係は分かれる寸前。その辺が最低限の尺ですんなりと描かれる。もの凄く重苦しい出だしで、ゼロ年代の若者にこれはしんどいんだろうなあ。こういうのがウケた時代があったんだよ、昔ね。
 平野綾水樹奈々は原作のイメージには合わないけれど、アニメ版のキャラや演出にはぴったり合っていると思う。それに、ダブルヒロインに当代の人気声優を上から順にあてがうあたりも、トレンディドラマへのパロディと言ってもいいだろう。
 そういえば、この1話は脚本だけじゃなくて絵コンテも佐藤博暉が担当。「key the metal idle」の監督を務めた知る人ぞ知るカリスマクリエーター。本当に「大人向け」のフィルムにしたかったんだろうなあ。

2話「ずっと前から仕組まれてた、そんな出会いって、信じる?」
 とりあえずマナを除くヒロインが一通り出そろった感じ。はるかとの、公園での会話シーンが作画マニアとしては凄すぎる。二人の絶妙すぎる距離感、はるかが冬弥にもたれかかったときの質感、演出作画共にテレビの枠を越えたレベル。このシーンで示されるはるかの危うさ、みたいなものがが胃に良くない(笑)。
 理奈はいい女だなあ。あと、水樹奈々は本当に良い声優になった。他のアニメ声優にありがちな、特別に自己主張するような「色」が無くて、当代最強のサブヒロイン声優*1だと思う。
 あとは、毎話モノローグを字で写したり、必ずハーモニーがワンカットあったりするんだけど、個人的には良い表現だなあ、と思ってるんだけどどうなんでしょう。
 自宅の電話を使うと後で電話代の請求が怖いので公衆電話を使う、なんて今の若い子は分かるんでしょうか?多分分からないんだろうなあ。

3話「手と手、肩と肩、背中と背中、それから。服の上からだっていいんだ」
 冬弥と由綺を気遣う理奈がかわいい。しかしまあ、冬弥と由綺は決定的にすれ違っているようにすら思えるんだけど・・・。由綺と比べて理奈の作画が優遇されているように思えるのは気のせいだろうか・・・。


4話「想像を超えてわかり合えてるって、感じる時がある。逆の時も多いけどね」

 マナちゃん初登場。こういうキャラが出てくるとホッとする。
 理奈が冬弥をつまみ食い(笑)しようとするけれど、冬弥が駄目人間過ぎて全てがすれ違ってしまう、というお話。二人とも同じ方向を向いて入るけれど、タイミングが全てを失わせてしまう。今の二人の状況を表した1話。

5話「邪魔をするのが、近しい人間だけとは限らない。知らない人ほど、手厳しい」
6話「悩みを忘れるいい方法。他人のトラブルに首を突っ込んでみるってのは、どう?」
 弥生さんが遂にあれやこれや。弥生さんとやみさき先輩が抱える問題が次々と明らかに。このアニメにはまともな人間が一人もいない、ということが改めて明らかになる話。
 それにしても、このアニメのヒロイン達は全員重すぎる・・・(笑)。

*1:なのはにしろ、DTBにしろ、水樹奈々の出演作で商業的なヒット作はいずれもサブヒロイン。だからこそ、ハートキャッチプリキュアがどう転ぶかは楽しみ。