観た。すげえ面白かった

 あの逆シャアのオフィシャル続編で、しかも16歳のミネバ様と18歳のプル*1をヒロインに据えた小説・アニメという、ちょっとでもツマラン物を作ろうものならアニメ史に悪名を永遠に刻むだけでなく、全国のガンダムマニアに命を狙われかねないビッグ・プロジェクト。
 小説版は戦争物や小説版∀ガンダムで評価の高い福井晴敏。アニメ版は「るろうに剣心 追憶編」「びんちょうタン」「シュヴァリエ」の古橋一浩。小説版はガンダムファンも納得の出来だっただけに、アニメへの期待もかなり高かった一作。
 そして、私も発売日にBlu-rayで購入、早速観てみたけどスゲー面白かった。古橋一浩というと、アニメ的演出を極力廃したストイックな日常芝居に、それとは真逆の外連味溢れるアクションを入れてくる、という実にアニメーター泣かせな監督というイメージがあったんだけど、今回もそのへんは健在。特に登場人物達の実に自然な*2動きは感動もの。所々総作監高橋久美子っぽくないところがあって、スタッフロールを観たら作画監督と原画に千羽由利子の名があって納得。対してロボット*3の戦闘シーンは、(一部CGが使われているけど)おそらく作画による戦闘シーンとしては現在最高峰。アニメ史上でもトップクラスのクオリティ。メカをCGで表現するのが主流になって、メカを描けるアニメーターが減少しているというから、これから数年かけてガンダムをこのクオリティで作ることは、この国の伝統技術保全に一役かってくれるだろう。
 そんで、このアニメを観て、「全ての世代のアニメファンの最大公約数的な宇宙世紀ガンダムだなあ」と思った。
 おそらく、ユニコーンを観て「こんなのガンダムじゃない」って思う人ってほとんどいないと思うんですよ。ファースト世代の40代も、私のようなアナザーガンダム世代も、みんながみんな、「ああ、ガンダムってこうだったよな」って思うんじゃないかな。無重量の描写、クシャトリアの出撃シーンからファンネルが展開してザコメカを撃墜するところ、ガンダムをめぐる父と子の物語、etc.。お話の骨子から「ぐぽーん」の効果音に至るまで、とにかく細心の注意を払って、「みんなのガンダム観」に沿うように作られている。
 もしかしたら、これを「シリーズ物のレールに乗っかった無難な物作り」と言う人もいるかもしれないけど、そういった批判は拙速に過ぎる。何せ、ガンダムファンは富野本人が作った「∀ガンダム」ですら「あんなのガンダムじゃない」と言い切るような連中である。もはや、ガンダムガンダムである定義はオリジナルの手を離れファンの間に広く拡散してしまっている。しかも、その「ガンダムって、こうだよな」という思いは世代によって小さくない誤差すら持っていることは、大学などでアニメ系のサークルに所属していたorしている人は痛いほど感じているだろう。そういったなかで、広くガンダムファンをうならせるようなガンダムを21世紀の世の中に再構築するのは、おそらく新たな企画を一から立ち上げるよりも遥に難しく、また困難な道のりであったに違いない。
 そんな数々のハードルを乗り越え、この1話の完成に漕ぎ着けた原作者・監督ならびにスタッフには最大の感謝を。2巻以降も期待しています。
 
追記
 声優アニメとしても面白かったよ。ヒロイン二人が成長すると「伊藤美紀藤村歩」「本田智恵子→甲斐田裕子」になるのね、とかスパロボにZZと一緒に参戦するときはどうやって時系列の整合性を取るんだろう、とかキモいこと考えながら観てた。

*1:正確にはプルシリーズの中の一人

*2:アニメ的なオーバーアクションでない、という程度の意味

*3:「ロボットじゃない!モビルスーツだ」という意見は無視