『時々、未来が途方もなく怖くなる』

 タイトルは上記の「高杉さん家のおべんとう」の、主人公のセリフ。
 「高杉(以下略)」では、主人公のオーバードクターとしての生活のリアルさがすさまじい。教授の顔を伺ったり、バイトと称して地方の中・高校の非常勤講師に出かけたり、しかもその合間に自分の研究をしなければいけなかったり・・・。しかも、そこまでしても収入は世間のフリーター並み。
 世間では、このオーバードクターの描写はどう写っているんだろうか。
 私の交友範囲だけでも、ここ5年間でドクターが二人自殺しています。一人は中学校の同窓生。奇しくも同じ大学で学んで、博士課程からは他学へと渡り、そこで空を飛びました。もう一人は、学部生時代に仲良くなった人で、やはり他大学の博士課程に進学し、博士号取得後に空を飛びました。
 「博士が100にんいるむら」によると、博士の16%が無職で8%が所在不明(失踪または自殺)とのことだけど、私の周囲を見渡す限りではかなり実感をこもった数字です。自殺まではしなくても、鬱になって実家に引きこもった知り合いもちらほら・・・。
 世の中のワーキングプアを語る際に、高学歴ワーキングプア問題がフリーターや派遣切りと同じフィールドで語られる事が多い事に危機感を感じます。彼らドクターは、おそらく常人の数倍の勉強と努力をほぼ無報酬で重ね、日本の学術の根底を支え、そして今現在生活保護スレスレの経済状況に陥っている人々です。
 彼らの努力を「自己責任」の一言で切り捨ててしまう事こそが、「働いたもの負け」の世を助長してしまう事を世の皆様には自覚して欲しい。