魚価について

 漁師になって知ったのですが、現場での魚価というのはもの凄く安いです。
 例えば、六月の研修中、うちの網にスルメイカが大漁に(二〇トン近く)かかったのですが、その時の単価はキロ一〇〇円弱でした。二〇トン売っても二〇〇万円に届きません。次の日、スーパーではするめが一杯一〇〇円で売られていました。一杯200グラムとして、キロ単価五〇〇円です。差額の四〇〇円の内訳は?現場の人間には想像も付きません。
 漁法によるイカの鮮度ですが
 イカ釣り船による近海物>定置網>大型イカ釣り船による遠洋冷凍物
 であることは確実に言えるのですが、市場での価格差はほとんどありません。
 理由はある程度はっきりしていて、大都市圏での魚消費量の減少、それによる商店街などの鮮魚専門店の衰退などによって、大手スーパーチェーンでの販売価格や仕入れ価格が業界のデファクトスタンダードになってしまっているためです。例えば、大手チェーンの仕入れ担当者が「来週の特売日にスルメを一杯一〇〇円で売りたいからいくらいくらで仕入れたい」と言えば、その値段にならざるを得ないんですね。そこに、「魚の質」が介在する余地はあまりありません。
 大衆魚に関してはなんとなく業界の問題点は見えてくるのですが、高級魚になると全く見えてこなくなります。アオリイカは現在七〇〇円〜一〇〇〇円程度で推移していますが、近海物は東京や大阪ではあまり出回らず、高級食材店や飲食店に流れてしまいます。しかし、それでもキロ八〇〇円(今日の場合)にしかなりません。末端でキロいくらで売られているかは想像も付きません。
 一体誰が儲けているのか・・・。誰も儲けていないのかもしれませんが・・・。
 直販も含め、なんとかみんながもう少しずつ儲かるような売り方も考えていきたいですね。