漁師の食卓

 当初はエセ文化人的ブログをめざし、最近は自然派ブログを目指していたはずが、アニメとエロマンガの話しかしていないようなので、久しぶりに漁師らしい話題。
 漁師になってからは、当たり前かもしれませんが毎日魚ばかり食べています。食費はほとんどかからないし、魚はとてもとても美味しいので、楽しい毎日です。そんな漁師の食生活をちょっと紹介します。

 秋といえば、太平洋側ではサンマかもしれませんが、日本海ではやはりカワハギ類とカマスです。写真は、会社でもらったウマヅラハギを刺身にしたものです。肝が太く、東京や大阪では高級魚として珍重されるカワハギですが、北陸では小さい物がザルで二束三文で売られています(大きい物はちゃんと高級品としてそれなりの値が付きます)。
 この日はその小さいウマヅラを丁寧に捌いて、肝と刺身で晩酌でした。肝は沸騰しない程度の塩水で湯通ししてポン酢醤油で。ふわふわの食感と甘みが絶妙です。写真の日本酒は新潟県の「満泉鏡 吟醸ひやおろし」です。甘口の吟醸酒で、最初の一杯は美味しかったのですが飲むうちに香りと甘みが鼻について、正直なところちょっとしんどかった。
 ウマヅラは身は薄いですが肝が太く、新鮮なものさえ手に入ればカワハギよりもお得感があります。


 上の写真の3日後の食事風景。余ったウマヅラハギ(小)を醤油漬けにした後一夜干しにしたものです。醤油漬けは醤油・酒・みりんを5:3:2で混ぜた物に冷蔵庫で一晩浸します。醤油は七尾市内の桜井醤油のものを使っています。七尾市は味噌・醤油蔵がたくさんあるのですが、個人的に桜井醤油の物で落ち着きました。火鉢を使って軽く炭火で炙りながら日本酒をダラダラと日が高いうちから飲みました。カワハギは淡泊でそのまま焼いてもあまり味が出ないのですが、一夜干しにするとぐっと旨味が出ます。洗濯ばさみなどを使って屋内でも作れるのでとっても手軽です。


 この魚がなんなのか一目で分かったらその人はプロです。一見するとマゴチに見えますが、よく見ると顔つきが全然違います。このツインテールによく似た顔つきの魚はワニゴチといって、コチの一種です。高級魚であるマゴチ・メゴチと違って値段がほとんど付かないので、うちの会社では出荷せずに捨ててしまいます。では不味いのかというと決してそんな事はなくて、マゴチに負けず劣らない素晴らしい味わいがある美味しい魚です。というわけで、この日はゴミカゴから拾ってきた朝獲れのワニゴチを刺身にしてみました。右が刺身にした写真です。値段が付かないのは、外見がいかめしく料亭なとでのお造りにしずらいことと、味がやや淡泊で火を通した時に味が落ちてしまう事などが挙げられるとおいます。ただ、新鮮な物を刺身にするぶんには非常に美味しい魚です。近江町市場などではたまに見かけるので、見かけたら是非買いましょう。非常に「お買い得な」魚です。


 写真は牡蠣フライです。なぜ定置網で牡蠣かというとこんな理由があります。定置網では年に2回網換えをするのですが、網を支えるワイヤーなどは数年に1回しか交換しません。それを交換する際に、ワイヤーにびっしりと牡蠣やムール貝が群生している事があるのです。ワイヤーに付いていたものとはいえ、完全に天然の牡蠣です。養殖物や磯での海女捕り物と比べ形が悪く出荷しても値が付かないので、ワイヤーの交換作業中から次々と剥いて船の上で生で食べてしまいます。五年物の、とてつもなく大きい身の牡蠣でした(それこそ数個食べればお腹がふくれてしまうくらいの)。もう養殖物は食べられないかも・・・。仕事中とあって、酒がないのが残酷に思えるくらい濃厚な牡蠣でしたよ。
 写真は余った牡蠣を持ち帰ってフライにしたものです。これまたとてつもなく美味かった・・・。

 以上、先週の晩酌写真でした。漁師は本当に素晴らしい仕事ですよ。