レンタル版はテレビ版ソースでの収録・・・

 TSUTAYAでレンタル。しかし、レンタル版はテレビ版ソースの収録なのか、画面が4:3かつぼけぼけ画質だった。うーん、Blu-rayで買おうかな。
 原作は既読。原作では時代考証がしっかりしていて、かつ金属バットなどちょっとしたifを楽しむお遊びもあって、個人的にはかなり楽しめた。どうやらアニメではかなり“時代考証”によった作りをしているらしい。
 というわけで、1巻(1〜2話収録)を観たのだが、いやあ、いいですね。作りがしっかりしているアニメというのは実に良い。監督は「ぽてまよ」で一躍その名を高めた池端隆史。その堅実な画面作りは、Wikipediaの作品履歴を観れば一目瞭然。
 とにかく時代考証がしっかりしている印象を強く受けた。特に女学生のファッション。
 やぼったい戦後のセーラー服が出てきたらどうしよう、と思っていたけど、きちんと膝丈のスマートなセーラー服だった事にまず拍手。大正時代はセーラー服はまず運動服として登場し、さらに女学生による様々な着こなしの開発によって、かなり華やかな衣装として存在していた。当時の叙情画やわずかに残る写真を見れば分かるけど、丈も膝丈がポピュラーだった。そもそも袴との差別化のために生まれた衣装なので当たり前なのだが。スカート丈が長くなるのはセーラー服が公立校でも制式化される昭和初期から戦争中にかけて。
 また、登場人物の半数近くが袴姿なんだけど、腰板が省略されていたり(行灯袴の腰板を省略するのはこの時代のあたりから)、襦袢との色あわせに少し気が遣われていたり、結構個性が出ていて感激。みんな無地なのは校則で決まっているからなのかな?一応補足しておくと、大正から昭和初期にかけては女学生を中心に華やかな色使いが流行し、次々と新製品がメーカーによって発売された、日本の歴史における「和服の全盛時代」。元をたどれば、明治末期に学習院の院長に乃木希典が任命されたのがそもそもの始まりと言われる。当時の学習院女子部は華族女学校の流れを色濃く残し、良家の子女たちがお召しから友禅まで、その着こなしを競っていたという。そして彼女たちをファッションリーダーとして、他校の女学生にも流行が伝搬していく、という風潮があった。それを国家衰亡の兆しとした乃木希典は質素倹約令を女学生に発令、校則によって華やかな衣装が禁止されてしまう。女学生は泣く泣く木綿やセル(毛繊)、銘仙(太い糸で平織りした比較的質素な絹織物)といった質素な和服に身を包むがそこに目を付けたのが衣料メーカー。かねてからの産業革命と様々な染料の開発によって、大胆な柄の染め付けと大量生産の体制が確立、女学生向けに華やかな色・柄の反物が次々と発売され、女学生の間でも大流行したという。昨今、アンティーク和服として古着屋や骨董屋で重宝されているのも、この年代の和服だと思う。そこまで栄えた和服が戦後急速に廃れてしまった事には諸説有るんだけど、個人的には「戦争で焼け出され、買い直すには和服は高すぎた。そして、そこに欧米から救援物資として大量の洋服が入ってきた」という説を一番の影響として挙げておきたい。だって、そうでもなければここまで合理的で快適な衣服が廃れるわけもない。洋服と和服の共存、という事に関しては大正時代に既にかなり理想的な形で実現できていただろうし。
 というわけで、そんなかなり時代考証をしっかりした上で作られているこの「大正野球娘。」、期待作である。まあ、首都圏では放送はとっくに終わってるんだけどね。地方民の悲しさよ・・・。
 以下各話感想。
1話「男子がすなるという、あれ」
 サブタイトルは紀貫之土佐日記からかな。ただ、「す・なる」で「するという」「している」という意味だと思うのだが・・・。いや、受験生だったのは十年以上前なので自信はないのだけれども。
 主人公の小梅が親友であるお嬢に野球の誘いを受けて、なし崩し的にメンバーに入れられてしまう。お嬢が突然野球を始めると言い出したのは、男尊女卑丸出しの許嫁に一泡吹かせるためだった・・・。
 のっけからの「東京節」にのけぞる。いやあ、これは良いですよ。歌詞はエノケン版かな?エノケン版の東京節は震災前の物だけど、アニメの背景はきちんと震災後の物になっていたのも好感触。
 とりあえず9人には満たないけれどメンバーも追加されて、とりあえず野球を始めようか、という雰囲気ができあがったところで2話へ続く。
 画面作りからお話作りまで、ひっじょう〜に地味だけど、個人的にはかなり今後が楽しみな出だし。
 
2話「春の長日を恋ひ暮らし」
 サブタイトルは柿本人麻呂の「霞立つ 春の長日を 恋ひ暮らし 夜も更けゆくに 妹も逢はぬかも」からかな?自信がなかったのでググったらどうやらそうらしい。受験から11年経っても、覚えてるモンは覚えてるモンだな。
 2話はメンバーが集まるまで。意外と早くメンバーが集まってビックリしたけど、1クールしかない事を考えれば妥当なところか。
 2話も女学生のファッションについて補足しておきたい箇所がいくつか。
 後輩みんなの憧れ、巴がモガ風のショートカットなのが嬉しい。原作だと、巴は親からネグレクトされて育ち、自立して生きていくために職業婦人を目指している、という設定。しかし成績はそんなに良くなくて、女性の職業選択にそれほど自由がなかった時代、教師という柄でもないし記者でも目指すか、という具合に記者を志して新聞部にも籍を置いているようだ。そんな巴の髪型だけど、当時「モガ」というのは不良女学生の代名詞。おかっぱ以外のショートカットは論外、という時代。きっと、巴は学校の成績も良くないし、学校側からは問題児として扱われているのではないだろうか。実際、作品中も巴以外にショートカットのキャラはモブキャラ含めて見あたらない(この辺も芸が細かい!)。巴はきっと当時の少女小説にありがちな「はすっぱなボーイッシュガール」というキャラとして後輩に認識されているのだろうね。
 あとは、野球の作画がかなりしっかりしていて驚いた。女の子投げと経験者の投げ方で、きちんと肩の使い方がかき分けられていてビックリ。このへんはきちんと力量のあるアニメーターがいる証拠で、あれだけ潤沢な作画資源を誇りながら野球の作画だけはへなちょこだったハルヒと比べると雲泥の差。
 お話としては、アンナ先生が良い味を出していた。当時の日米では野球のレベルに大きな隔たりがあったはずなので、アンナ先生がアメリカ仕込の野球をたたき込む事である程度チームのレベルアップをはかる事が出来るだろう。
 3話では早くも練習試合が描かれるそうなので、取り敢えず期待して待ちたい。でも、Blu-rayで買おうかな、本当に。