うーん、上出来上出来

 私は西尾維新の作品を全て購入して読んでいて、なおかつ新房昭之作品も別名義の18禁作品含め全て観ている、というおそらく全国に五千人くらいしかいない人間の一人だ。
 出来が良ければBlu-rayで買おうとも思っていたけれど、当初の予想通り素晴らしく出来の良いジャンクフード。ほおばる度に化学調味料の味が口内を刺激して、それでもなぜだか止められない、という作品に落ち着いていて安心。これはDVDなんか買わずに、テレビでの視聴もしくはレンタルで済ます事こそが「正しい」作品だと認識。
 個人的には昨今の新房昭之氏の作風に関しては、「コゼットの肖像*1で一度極まってしまっていて、それ以降のテレビアニメでの演出は「コゼットの肖像」のリサイズというか、テレビ用に砕いただけの縮小再生産に過ぎないと思っている。化物語でそのあたりを打ち破って新しい境地を目指して欲しい気持ちと、今まで通りの愉快な画面作りを続けて欲しい気持ちと両方有ったので、実際に「いつもの新房昭之」だったことを確認した時はちょっと複雑な気分だった。
 こういったジャンクフードは気軽につまむのが正しいと思うので、2巻以降もレンタルで楽しく視聴させていただきます。あと、こちらはちゃんと副音声のオーディオコメンタリーまで収録されていて非常に太っ腹。
 以下各話感想。
1話「ひたぎクラブ 其ノ壹」
 憑き物落としの問題編。中二病の少年がツンデレ美少女と出会って、憑き物の存在に気づくまで。以前も書いたけど、このシリーズの特徴として、ライトノベルの作法そのものを皮肉っている、というのがあると思う。各話次々と萌え要素の固まりのような少女たちが出てくるけれど、その萌え要素は「憑き物」に過ぎず、憑き物が落ちる事でその萌え要素も取り払われてしまう。ひだぎはこの話以降どんどん「ツン」がとれて「デレ」の部分が大きくなるし、羽川に関しては憑き物と共に眼鏡を外して単なる秀才美少女になってしまう。だからこそ、いつまでもロリキャラのままでいてくれる八九字と存在そのものが怪異である忍野忍はひだぎ以上に特別な存在である事が、序盤から示唆さているといっても過言ではない。
 アニメとしては、久々にテレビアニメ復帰のぽよよんろっく渡辺明夫のキャラデザが非常に嬉しい。あと、作画枚数の割に異常なほど画面が派手なのがいつもの新房昭之。単なるBoy meets Girlかつ憑き物落としに過ぎないのを大量の戯れ言で煙幕にまいていた原作を、ある意味完璧に再現している。しかしまあ、褒める場所が特にあるかといわれれば、特にないのもいつもの新房アニメだよなあ。
 ただ、声優アニメとしては見所がいくつか。実は化物語アニメ化の報を耳にした時、「ちびっ子吸血鬼忍野忍の声は斎藤千和で決まりだな」と浅はかな考えを口にしたのだが、まさか戦場ヶ原ひだぎ役で使ってくるとは思わなかった。しかし、斉藤千和の声にはなんというか「意地を張っている」感が元から備わっていて、まさにひだぎ役は適役だったと言える。その辺を見落としていたのは声優アニメファンとしては手落ちだった。
 あとは主人公のモノローグで羽川を呼ぶ時の発音が「いいんちょ」だったのに感動。そうそう、眼鏡・巨乳・三つ編みといえば「委員長」じゃなくて「いいんちょ」だよね、うんうん。そして、その「いいんちょ」役をTo Heartのマルチ役でスターに上り詰めた堀江由衣が演ずるという奇縁に複雑な感動。時が経つのは早いよなあ。
 画面作りの派手さに反して作画そのものには期待できそうにないので、声優アニメとしてみるのが正しい見方なのかな。
 
2話「ひたぎクラブ 其ノ弐」
 憑き物落とし、解決編。特に語る事はないかなあ。Wikipediaだと忍野忍役が平野綾、となってるけど1期目で台詞らしい台詞ってあるのかなあ?
 あ、関係ないけど、会社で漁師の皆さんから簡易電卓かつ簡易ウィキペディアとして重宝されているのだが、よく「栗原さんは何でも知ってますね」と感心される度に「何でもじゃないですよ。知ってる事だけですよ」と答えているのだが、今のところ単なる謙遜だと思われている様子。いつか元ネタがばれる日は来るのだろうか。

*1:誰にも勧めないけど個人的大傑作。大画面推奨、というかホームシアター以外では観てはいけないアニメ。Blu-rayはまだですか?