結局Blu-rayで買いました

亡念のザムド 3 [Blu-ray]

亡念のザムド 3 [Blu-ray]

 いつまで経ってもTSUTAYA七尾店で貸し出し中なので、結局3巻はBlu-rayDVDを買った。4巻以降も継続して買います。1・2巻は財布に余裕ができ次第。しかし、ネットのレビューサイトでもほとんど取り上げられないおかげで、完全に前情報一切無しで観ています。こんな真っさらな状態でアニメを追いかけるのはいつ以来だ?
 しかしまあー、面白いよ、これ。ロボットアニメ*1としては、ここ10年でも出色の出来映え。ゼロ年代最高のロボットアニメは「ゼーガペイン」で決まりだと思ってたけど、最後に凄いのが待ってた。
 監督の宮地昌幸・アニメーションディレクター(総作画監督)の奥村正志は共にジブリ出身の若手。特に宮地昌幸は早くから宮崎駿に見出され、わずか25歳で「千と千尋の神隠し」助監督に抜擢された俊英。
 というわけで、序盤からジブリっぽい(というか、宮崎駿っぽい)演出が目を引く。
 これは、おなじくジブリ出身の吉田健一がキャラデザ・総作監を務めた「エウレカセブン」でも時々そうだったんだけど、エモーショナルなシーンはとにかくエモーショナルに動かす。カメラの位置や物理法則といった、いわゆるリアリティをなぎ払って、画面全体を躍動する登場人物達。一歩間違えたら全体の流れから浮いてしまいかねないんだけど、とにかくダイナミックな動きでこちら視聴者側をねじ伏せてくれる。そして、そのねじふせられる快感。このへんはジブリのそれを確かに受け継いでいる。BONESには、今まで有りそうで無かった作風だと思う。BONESには『作画は良いんだけどね・・・』という印象がぬぐえないでいたんだけど、時折個性的な監督の下で本当に良い物を造るからあなどれない*2
 メインライターの清水恵・野村祐一は共にメインシナリオは初めてかな(?)。まだ8話までだけど、もの凄くきちんとドラマが書けていると思う。「生きる」「考える」といったような単純だけど深い言葉を、様々なシチュエーションで様々なキャラクターに言わせる事によって、物語のテーマをはっきりさせる一方でドラマの深みも匂わせている。50話も使いながら、結局何が言いたかったのかよく分からなかった「エウレカセブン」(シリーズ構成・佐藤大)とは大違い。同じスタジオ、同じような作品パーツでここまで違いが出るとは。やっぱり脚本は重要だ。
 奥村正志に継いで画面作りに貢献していると思われる倉島亜由美(キャラデザ・各話作監)の仕事ぶりも素晴らしい。「エウレカセブン」では、この人が描くエウレカが一番好きだったんだけど、今回も八面六臂の活躍。女の子がかわいい(デザインだけじゃなくて動きも含めて、ね)のはやっぱり観ていて嬉しいもの。あ、個人的には女性キャラではハルが一番好き。三話くらいまでは、ナキアミが戦い担当(もっと言えば非日常での)ヒロインでハルが日常パート担当ヒロインで、ゆくゆくは主人公を挟んでの三角関係になるのかと思っていたら、どうもそういう“分かり易くアニメ的な”お話にはならなそうな感じ。
 とにかく今のところもの凄く面白いので、まだ観てない人は一度観てみる事をおすすめします。観る時は、Blu-rayDVDがおすすめ。特に音響が全然違います。

以下、6話から8話感想

6話「ハルと極東自治区
脚本・野村祐一、絵コンテ・大橋誉志光、演出・原口浩、作監・塚本知代実・阿部慎吾
原画・谷口淳一郎・水畑健二
 五話でアキユキが出した手紙を受け取ったハルが、アキユキを探しに行くために、現状で唯一島外へ出る事が出来る職業である軍に志願する。折笠富美子の落ち着いた声・演技もあってもっとおとなしめのキャラかと思ったら、かなり積極的に物語に絡んできてびっくりした。それにしても、そんなにアキユキの事が好きなのか。
 フルイチは徐々に嫉妬に囚われ始めている様子。がんばれ、男の子!
 あとは、軍の副官、プロイ・スカッキ(CV・根谷美智子)が良い味を出し始めた。

7話「屹立 背負うは命か猫股か」
脚本・清水恵、絵コンテ・寺東克己、演出・宮原秀二作監真庭秀明・岡山聡
原画・板津匡覧・野村和也・数井浩子・林祐己 他
 家族的な繋がりのザンバニ号、ヒトガタ狩りで母を失った少女、などなど『家族』というのが一つのテーマである事が浮き上がった話。その辺はエウレカセブンもそうだった気がするけど、完成度はこちらの方が百枚は上手。軍の正規ロボットであるASPと大型ザムドの戦闘シーンが印象的でもあった。どこか小者臭を漂わせつつも、覚悟だけは決まっている垣巣中佐の立ち位置がおいしいなあ。キャラ作画の端々に真庭秀明っぽさが残っていたのも、個人的には嬉しかった。
 あとは、ちょこちょこと世界観の見通しが良くなってきた。かなり練られて作られているのがよく分かる。DVDの解説書にあった「サービス精神を覚えると、必死に努力しているから手に入っていた誠実な表現方法をどんどん忘れてしまいそうになります」という監督の言葉が頼もしい。

8話「詰腹峠のヒトガタ狩り」
脚本・清水恵、絵コンテ・村田和也、演出・安藤正臣作監室井康雄水畑健二
原画・小西賢一・村中博美・押山清高・柴田勝紀 他
 作画陣がとにかく豪華!エモーショナルなシーンはとにかくエモーショナルに動かす、というのが今までで一番実践されている。洞窟の中のおどろおどろしさ→洞窟の外で視点をグリングリン回しながら恋人たち涙の再会、の突然の流れは挿入歌も相まって少し笑ってしまった。しかしまあ、フルイチがかわいそう。一応体を張って、弱気の虫を押し殺して洞窟に入って行っているというのに、肝心のハルは洞窟の外でアキユキと感動の再会。そりゃあ、普通ならキレますよ。
 何はともあれ、最後の雷魚の初登場と戦闘シーンが全て持っていきました。あんな引き方したら9話が観たくて観たくて堪らなくなるじゃないか・・・。

追記
 ジブリは「千と千尋の神隠し」の段階でこれほどの才能を抱えながら、なんでゲドを宮崎吾朗に作らせてしまったのだろうか。

*1:厳密にはザムドはロボットじゃないんだけど、アニメ文法的にロボットアニメに分類しておいた方が無難かな。スパロボに出ても違和感無いし

*2:五十嵐卓哉の「桜蘭高校ホスト部」、岡村天斎の「黒の契約者」等々