2010年代のSFここにスタート

 「2010年代のSFはここから始まる」という衝撃的なまでの売り文句で登場。少なくとも今世紀に入って以来の10年弱を、休むことなくトップランナーとして突っ走ってきた若手SF作家・小川一水初の大河シリーズがスタート。全十巻構想で、第一弾はなんと上下分冊の書き下ろし。これは期待しないわけにはいかない。
 地球から10光年離れた惑星・メニーメニーシープ。移民船着陸時の事故のため、到着後に花開くはずだった地球の文明は失われ、200万の人々は産業革命直後レベルの文明をなんとか維持していた。わずかに残された恒星間航行レベルのハイ・テクノロジー蒸気機関が共存する奇妙な社会は、不思議な安定と秩序を人々にもたらしている。しかし、核融合炉とロボットの管理者権限を握った独裁者による圧政が日増しに酷くなり、主人公である医師カドムは一つの行動を起こす・・・。
 取り敢えず上巻読了。いやー、今のところスゲー面白いっす。まさかこういった巧みな世界設定でもって、スペースオペラスチームパンク、その他諸々のSF要素をどかんと詰め込んでくるとは思いもよらなかった。海外の一級SFと比べても遜色ない、21世紀型のワイドスクリーン・バロックといっても過言ではない出だしだと思う。
 下巻をさっさと読もう。