事件の真相は。あと、人民軍の涙が目から離れない

天安門」 アメリカ・189分・1995
 1989年に発生した天安門事件。多くは情報操作の果てに隠蔽されたが、人民軍が投入され、実弾によって多くの学生が死亡したこの事件は世界中に衝撃を与えた。
 この映画では、事件に関わった学生・労働者・運動家・知識人たちに直接取材を敢行し、事件の真相・本質を浮き彫りにしていく。
 なぜ学生達は立ち上がったのか。なぜ学生達も政府も譲歩する事が出来なかったのか。なぜ人民軍が投入されてしまったのか。そしてその後中国はどうなったのか。
 これら、隣の国に住む我々にすら不可思議な事件の全貌が少しずつ明らかになっていくのはかなりドラマチック。また、一方的な視点ではなく、政府要人や人民軍からの視点も加味されていて、かなり慎重に中立を守って作られているドキュメンタリーでもあった。
 個人的には、一度目の進軍の際に、支援者である市民から涙ながらに説得され、銃口を民衆に向ける事が出来ないでいる若き人民軍兵士の涙と表情が忘れられない。この進軍の際には、政府はいったん人民軍を引っ込めて学生達に退去を促す時間を与えるのだけれど、学生達は結局譲歩することなくあの悲劇が起こる事になる。あの涙を流した人民軍兵士がどのような心情で引き金を引く事になったのか、想像するだけで心が引き裂かれそうになる。
 ドキュメンタリーとしても非常に高品質だし、天安門事件に関する数少ない資料でもあると思うので、観る機会が他に有れば是非観て欲しい。