たまには児童文学もいいよね

地球のまん中 わたしの島 (ノベルズ・エクスプレス)

地球のまん中 わたしの島 (ノベルズ・エクスプレス)

「お父さんの生まれた島に帰って、ペンションをはじめる―」両親のことばは灯子にとって晴天のへきれきだった。コンビニもなければファーストフードの店もない、人口百人ほどの島!そんなところで暮らすって、本気なの?同級生は、たったひとり。漁師をめざしている少年。なにかと灯子につっかかってくるのだが、なぜだか、まぶしい存在で―少女と少年と「島」の、キラキラした物語。

 きくざわ書店で平積みだったので購入。どうも、今夏の石川県読書感想文推薦図書だそうです。だいたい小学校高学年から中学1・2年生向け。私は小学生の頃、空気を吸うように本を読みあさっていたくせに夏休みの読書感想文および課題図書というやつが大嫌いな「イヤなガキ」だったのですが、最近は進んでこういう本を読むことにしています。この歳になってみると、なるほど大人が子供に「読ませたくなる理由」が何となく分かるんですよね。この本も、石川県が舞台な上でかなり面白いので、できれば石川県の小学生みんなに読んで欲しい。そして、石川県の小学生には私のような偏屈な大人の言いなりにならずに、もっと不健康な本を読んで欲しい。
 金沢(がモデルの小都会)に住んでいた中学生の女の子が、突然父親の生まれ故郷の辰島(モデルは輪島市舳倉島(へぐらじま))に引っ越すことになり、そこでの新しい生活に戸惑いつつも馴染んでいく、という物語。漁師を目指す同い年の少年との淡い初恋物語でもある。
 作者は泉鏡花記念金沢市文学賞受賞作家で、富山県出身の金沢在住。漁師町の描写も、かなり取材したようでもの凄くリアル。
 物語は他愛もない、というか別に複雑な事件も起こらずに、女の子のド田舎での日常が静かに描かれるだけなんだけど、主人公および家族の境遇に今の私が近いところにいるせいか、もの凄く感情移入して読んでしまった。漁師のメンタリティとか、もの凄く良く書けていると思う。この漁師のメンタリティに関しては、いずれこのブログにまとめたいと思っているのですが、陸の人間にはとうてい理解できない価値観を彼らは(そして私もいずれは)持っています。その一端を感じることが出来る本書は、少なくとも石川県の小学生には本当にお薦め。石川県の教育委員会(およびコンクールの主催者の北國新聞)は良い仕事するなあ。