勃起を恥じるな、愛を恥じるな

愛のむきだし

主人公は敬虔なクリスチャン一家に育ったユウ(西島隆弘)。神父の父(渡部篤郎)は、妖艶な女サオリ(渡辺真起子)に溺れ、やがて逃げられる。そのショックから、父はユウに懺悔を強要するが、懺悔のために毎日『罪作り』をエスカレートさせるうち、ユウは女性の股間を狙う盗撮のエキスパートになって行く。そしてある日、ユウは運命の女性ヨーコ(満島ひかり)と出会い恋に落ちる。一つ屋根の下で済むようになった彼ら一家に、やがて怪しげなカルト教団の魔の手が迫る…。

 シネモンドで鑑賞。休憩無しの四時間ぶっ続け上映。途中、一度トイレのために席を立ってしまったが、それ以外はこれといって退屈することもなくのめり込んでみることが出来た。監督はもはやこの方向性では巨匠と言ってもいいかもしれない園子温
 この手のくだらなさ100%B級バカ映画(褒め言葉)を楽しむには、観る側にもリテラシーというか、ある程度の素養が求められる。そしてこの手の映画は得てしてネット上などでは激賞されていることが多く、ほいほいと観に行って何とも言えない気分になる羽目に陥る人も多いだろう。なので、とりあえずこの手の映画を観るために必要な心構えを書いておこう。

  • 唐突なストーリー展開はサービス精神の現れ。
  • パンチラは百難隠す。
  • 『無駄な』お色気シーンは存在しない。
  • 迫真の演技や『頑張っている』アクションシーンには心からの賞賛を。

 とりあえずこの辺りを念頭に置いて観て欲しい。
 いや、それにしても怒濤の237分でございました。冒頭、タイトルが出るまでがなんと約一時間。実はこの一時間はバカ度が低い分いくらか退屈で、寝そうになってしまった。老師に盗撮の秘技を伝授される辺り*1から楽しくなり始め、女装したユウとヨーコ、そして唐突に現れた不良軍団のアクションシーンで一気に目が釘付けになり、バーンと出るタイトルには不意を突かれて圧倒されてしまった。いや、それにしてもヨーコ役の満島ひかりが実にかわいく、そしてなかなかに腰の入ったアクションシーンをこなしていて本当に素晴らしかった。あとは、カルト教団ゼロ教会(モデルは明らかに統一教会)の女幹部コイケを演じた安藤サクラの演技が正に迫真、最後の自決シーンは『徳川セックス禁止令』以来の女割腹シーンとして語り継がれることだろう。
 映画のテーマは「愛」。それも、なんとなく与えらたテーマではなくて、とにかく濃密に、四時間の時間をかけてこれでもかと掘り下げられていく。宗教・盗撮・女装・勃起・同性愛・勃起・ひたすらに勃起・・・・とモチーフの一つ一つはとてつもなくくだらないのだが、そのくだらない熱さこそが、最後のシーンに繋がるに至って物語の強度を測り知れない物にしている。
 今月末にはDVDが出るが、やはりこれは映画館や映画祭などのイベントで観るのがふさわしい傑作だと思うので、金沢市民はすぐにシネモンドに行って鑑賞するように。
 それにしても八月にはサマー・ウォーズがあるし、秋にはロボゲイシャがあるしで、今年は邦画の当たり年だ。*2

*1:カンフー映画風なのがなおよし。映画館じゃなかったら声を上げて笑いたかった

*2:ロボゲイシャには既に予告編の時点で女割腹シーンがあって驚く。今年は女割腹ブームが来るか?