人間万事塞翁が馬

スラムドッグ・ミリオネア

 言わずと知れた、昨年のアカデミー賞8部門受賞作。金沢でも二ヶ月ほど遅れてロードショーがやってきた。ルネス9シネマで鑑賞。
 インドのスラム街で育った無学の青年ジャマールが、「クイズ・ミリオネア」で全問正解まであと一問、というところまでたどり着く。しかしカンニングを疑われたジャマールは警察当局によって拷問まがいの取り調べを受ける。そして、彼の壮絶な人生が「なぜクイズに正解できたのか」という問いの答えとして語られていく。
 実に面白かった、そしてそれ以上に様々な解釈が取れる映画だとも思った。一番分かり易い解釈は「真面目に生きるといつか良いことあるよ」というものなんだけど、個人的には「全ては運命なんだから幸も不幸も粛々と受け止めて生きよ」というメッセージの方を強く受け取った。
 だって、主人公は確かに不幸な青年だけど、ミリオネアに正解できたのは完全に“運”だもんなあ。はっきり言ってアメリカ人が羨むアメリカンドリームや、日本をはじめとする東洋人が尊ぶ勤勉ともかけ離れた概念だ。逆にこういう映画が全米でヒットして、さらにアカデミーに輝くというのは、それだけアメリカ人の精神が追い詰められているということかもね。
 映画としては非常に良くできているけれど、なんとももやもやとした思いが胸に残る、そういう映画でした。