ゆるやかに再生する人生

まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)

まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)

まほろ市は東京のはずれに位置する都南西部最大の町。駅前で便利屋を営む多田啓介のもとに高校時代の同級生・行天春彦がころがりこんだ。ペットあずかりに塾の送迎、納屋の整理etc.―ありふれた依頼のはずがこのコンビにかかると何故かきな臭い状況に。多田・行天の魅力全開の第135回直木賞受賞作。

 言わずと知れた三浦しをん直木賞受賞作。受賞時の記者会見で「好きな小説のジャンルはBLです」と答え、新聞掲載時に『※BL。ボーイズラブ。少年同士の恋愛をテーマにした小説』と注釈が付いて話題になったのは記憶に新しい。
 多田と行天の関係を中心に、様々な人間関係の断絶とその修復・再生が描かれる連作短編集。人生や人間関係は修復可能、というのが行天の小指に象徴されていて、どの短編も読後感は爽やか。巧みといえば巧み。物足りない人もいるだろうけど、個人的にはこれで十分。