久しぶりの大型新人

タイム・スコップ! (一迅社文庫 す 2-1)

タイム・スコップ! (一迅社文庫 す 2-1)

ストップ☆まりかちゃん! (電撃文庫)

ストップ☆まりかちゃん! (電撃文庫)

 これまた大町市で購入。
 なんか懐かしい匂いがしたから。そう、これは「センス・オブ・ワンダー」の匂いだ。
 デビュー作の「ストップ☆まりかちゃん!」は、主人公とひょんなことから同居することになった美少女マッドサイエンティストのまりかちゃんが引き起こす騒動を描いた短編集。バイオテクノロジーの天才で、特に非脊椎動物の遺伝子をいじくり回すことに情熱を燃やす、グログチャストーリー。センス・オブ・ワンダーとヌルい科学知識とトンデモストーリーのバランスが絶妙な佳作。
 デビュー二作目の「タイムスコップ」は、それこそ一迅社文庫よりもハヤカワ文庫JAが相応しいようなどたばたユーモアSF。ひょんなことから「時間を掘る」能力を身につけてしまった空堀すずめが引き起こすタイムトラベルストーリー。スコップで時間を「掘って」過去にタイムスリップする、というアイデアがまずSF者をニヤリとさせてくれる。そして、すずめの幼馴染みでサポート役のわたるの役所がまたニクい。わたるはいわば時系列の特異点で、すずめがどれだけ歴史を改変してしまっても、彼だけはその影響を受けない。終盤何者かが歴史を変えすぎて、すずめ本人が歴史から消えてしまうんだけど、すずめを救うためのわたるの奮闘が本当に面白かった。火浦功や東野司を思わせる、80年代風どたばたSFの秀作。SF界久々の大型新人。
 続編がありそうなので、今から楽しみに待ちたい。