大阪万歳

プリンセス・トヨトミ

プリンセス・トヨトミ

 電車の中で読了。

このことは誰も知らない。五月末日の木曜日、午後四時のことである。大阪が全停止した。長く閉ざされた扉を開ける“鍵”となったのは、東京から来た会計検査院の三人の調査官と、大阪の商店街に生まれ育った二人の少年少女だった―。前代未聞、驚天動地のエンターテインメント、始動。

 よく「大阪は日本じゃないから」と揶揄することがあるけれど、それを本当に小説にしてしまうとは驚いた。大阪には日本政府と密約を結んだ独立国家『大阪国』が存在する。そして、大阪の人々はそれを絶対に口外せず、秘匿し続けている。そしてその大阪国の存在理由とは、なぜその存在を隠し続けることが出来るのか・・・。
 なんとまあ、馬鹿げたことをこうも熱っぽく語ることが出来るのか。デビュー作「鴨川ホルモー」以来のあの語り口は本作でも健在。ユニークな登場人物たちも相まって、何とも言えない奇妙な小説に仕上がっている。
 正直前半は退屈だし、展開は唐突だし、小説としての出来は良くないと思う。だけど、最後は勢いだけで一気に読んでしまったうえに、ちょっと感動すらしてしまった。
 本当に変な小説だったよ。あと、ちょっと空堀商店街に行きたくなった。18切符の残りで行ってこようかしら。