やれやれ、としか言葉が出ない

http://www.shimotsuke.co.jp/news/tochigi/top/news/20090311/122658
 岩舟町の針谷育造町長は十一日夕、佐野市役所に岡部正英市長を訪ね、二月から始まった法定合併協議会(法定協)の休止を文書で申し入れた。「(対等合併ではない)今回の合併では町民のためにならない」というのが主な理由。同町は昨年七月、編入の可能性を周知した住民投票の結果、佐野市を合併相手に選択したばかり。合併を申し入れた側の町長が本格協議に入る段階で「民意」を軽視する行動に出たことで、町内からは町長リコール(解職請求)の声も上がっている。
下野新聞より

 私の生まれ故郷である栃木県岩舟町が合併問題で揺れている。いちおう十八年暮らし、内情をある程度知るものとしては馬鹿らしくてため息しか出ない。
 新聞の記事だけでは実情が掴めないので、簡単に説明しよう。もともと岩舟町は東に隣接する栃木市を中心に、栃木市・岩舟町・大平町藤岡町・西方町・都賀町からなる周辺一市五町による大合併を画策していた*1。もともとこの一市五町は日光例幣使街道の宿場町時代から経済的文化的な結び付きが強い。県立高校の学区も同じで、JAに関しては既にJAしもつけとして統合されている。合併を睨み、ゴミ処理場も共同利用している*2
 しかし、順調に進んでいた合併に、岩舟町が待ったをかけた。実はこの岩舟町、最初から合併に関して一枚岩ではなかった。岩舟町は元々岩舟村・静和村・小野寺村の三村が合併してできた町だ。その象徴である岩船山を中心に瓢箪のような形をしている岩舟町は、大平町を挟んで栃木市と近接する東部(主に静和地区)は栃木市と、佐野市と隣接する西部(主に小野寺地区)は佐野市との経済的結び付きが強い。そして、以前から栃木市佐野市、どちらと合併するかで意見が分かれていた。そこを、前町長がなんとか意見をまとめ上げ、栃木市との合併に漕ぎ着けつつあった。しかし、去年佐野市との合併を推進するグループの提案によって合併の意志を問う住民投票を実施。この住民投票佐野市との合併を望む声が栃木市とのそれを上回り*3栃木市との合併を推進していた前町長は責任を取って辞任してしまう。その後、佐野市との対等合併を公約に現町長が無投票で当選した。この動きに同調するように、やはり佐野市との繋がりが深い藤岡町も合併協議会から離脱、佐野市との合併を視野に入れ始める。しかし、これに当惑したのは佐野市だ。負債を抱え、農業以外目立った産業のない岩舟町と藤岡町を合併するメリットが佐野市にはないのである*4。この住民投票佐野市側に話が事前に通っていなかったのだ。その後の協議の結果議論の席が設けられるが、12万の人口を持ち、北関東最大のショッピングモールや工場を抱え今イケイケの佐野市と岩舟町の温度差は埋まらず、対等合併は困難と言うことになった。しかしこれには、対等合併を公約に掲げる現町長が困ってしまった。そして、今回のこの独断での合併白紙である。当然町内からはリコールの声も上がっている*5
 さらに、合併が白紙になるのはこれが初めてではない。岩舟町は当初はいすゞと日立の工場を抱える大平町を中心に、大平・岩舟・藤岡の三町での合併を目指していた。これは名伯楽で知られた藤岡町の前町長のとりまとめによって『みかも市』という新市名まで決まっていた。しかし、その前藤岡町長の突然の死去によって合併協議会は空中分解してしまう。そこで、今度は栃木市を引っ張り出しての大合併を、ということになったのだ。
 しかし、その大合併も岩舟町の突然の離脱によって空中分解してしまったのはさっき書いたばかりだ。岩舟町の選択肢はもう三つしかない。

  • 栃木市に頭を下げてもう一度一市五町による大合併を目指す。当然岩舟町民のメンツは丸つぶれだ。
  • 佐野市との吸収合併を甘んじて受け入れる。ただ、福祉や予算の面で岩舟地区が軽視されるのは当然避けられない。また、現在栃木市に頼り切っている社会インフラ(ゴミ・救急医療・警察・etc.)をどうするかなど、問題は山積みである。
  • なんとか単独で生き延びる道を模索する。岩舟町には岩船山・みかも山など観光資源がないわけではないので、上手く掘り起こせれば不可能ではないと思う。

 何はともあれ、既定路線になりつつあった合併協議を二度*6も破綻させ、長きにわたって県政を攪乱し続ける岩舟町の責任は重い。栃木市との一市五町による合併がベストとは行かないまでもベターな選択肢だったのは誰の目にも明らかだったろうに。全くため息しか出ないとはこのことだ。

追記
もし私の方に事実誤認等ありましたらご指摘ください。故郷を離れて十年経つので、現在お住まいの方に退っ引きならない理由がある可能性もありますので。

*1:http://www.town.nishikata.tochigi.jp/kikaku/gappeisankoushiryou.pdf

*2:このゴミ処理場がまたやっかいな問題となっている。もし一市五町の合併が頓挫した場合、各市町村でその建設・維持費用を分担することになる。単純に計算して六分の一、人口比で考えても八分の一程度を岩舟町は負担しなければならない。詳しい金額は分からないが、億単位の負担になることは確実である。もし佐野市と合併すると、その負担は佐野市が背負うこととなり、これが合併の最大の障壁となっている。

*3:未確認情報だが、栃木との合併推進派は投票をボイコット、なんとか投票率を50%以下にしようと画策したが失敗したらしい

*4:強いてメリットを揚げるとすれば、一市二町にまたがるみかも山の観光開発くらいだろうか

*5:といっても、一番声高に叫んでいるのは栃木市との合併推進派であろう

*6:このまま佐野市との合併も頓挫したら三度目だ。周辺自治体からの岩舟町への風当たりも強くなるだろう。