意外と面白いよ、これ

大正野球娘。 (1) (リュウコミックス)

大正野球娘。 (1) (リュウコミックス)

 女の子野球ものが大好きである。「野球狂の詩」「プリンセスナイン」「プリティリーグ」etc.。とにかく女の子が野球をする作品が、メディアを問わず大好きなのだ。体力面で劣る女子が如何にして男子と渡り合うか、というシチュエーションが既にドラマチックだ。あと、直接に体が接触しない野球というスポーツには、女子が参加する、というドリームが入り込む余地がまだ残されている気がする。
 というわけで、発売直後から一部の好事家の間で話題になり、何を考えたのかアニメ化まで決定してしまった「大正野球娘。」のコミカライズである。
 実は全く期待して無くて、あくまでファンアイテムとして買ったんだけど、結構面白かったよ。やっぱり、和服の女の子がわらわら出てくるので、絵で見せられるとかなり良い。和服の考証もかなりしっかりしていると思う。
 作家の父と勤労婦人の母を持つ環はおそらく自由な家風に育っているんだろう、いつも半幅帯を簡単に颯爽と締めているし、主人公の小梅は洋食屋のお嬢様らしく洋装、たまの和服の時はきっちりと名古屋帯。合理主義者の乃枝(眼鏡、おでこ!!!!)は縞や絣の普段着をざっくりと着ている。行灯袴の紐も結び切りで簡単に締めていて、個人的には一番好印象。ちゃんと個性が着こなしに表れているのは本当に素晴らしい。ベテランマンガ家らしい、いぶし銀の良い仕事だ。他のマンガだと意外とできてないんですよ、こういう仕事が。原作もファッションの考証はかなりしっかりしていたので、こういうのがアニメにも反映されるといいなあ。
 
 ちょっと関係ないけど、個人的には晴れ着よりも普段着の方が好きだ。友禅を着飾る女性よりも、織りの絣でちょっと粋に決めている女性の方に魅力を感じる。
 金沢には「加賀染め」という技法がある。これは友禅齋が京友禅を加賀の国にもたらすよりも以前からあった技法で、布を梅の木の樹皮と柿渋で染めたもの。そのままなら薄いピンク、藍や黒の染料を混ぜると何とも言えない渋い色合いを出す。さすがに男物の反物は作られていないので、手ぬぐいで何本か持っている。加賀染めは後に京友禅とうまい融合を果たして加賀友禅の礎となるんだけど、個人的にはやっぱり加賀染めの方が友禅よりも好きだ。私の普段着好きに関しては、あとで詳しく書こうと思う。