「まんが王国の興亡」またつまらんものを読んでしまった

http://www.ebookjapan.jp/shop/special/page.asp?special_id=itv003
ここに触発されて読んでみたが、まあ、つまらんかった。認証やら何やらやたら手間がかかったが、結局その辺の新書と同レベルだった。今から読もうという人がいたら、無理して読まんでもいいがいね、とだけ言っておく。
あ、個人的にはマンガの市場が拡大しようが縮小しようがどっちでも良い、という立場です。好きな漫画はたくさんあって、打ち切りになったら実に困りますが、別に死ぬもんでもないし。売れなくなったのなら、身の丈のあった規模まで縮小していけばいいんじゃないの?とは思う。流通量がクオリティを下支えする(下手な鉄砲数打ちゃ当たる)、という側面はあるだろうけどね。
なんか本人はマーケティングの専門家らしいが、具体的な数字がほとんど出てこない。そして具体的な数字が出てくる場所はひたすら胡散臭い場所ばかり。アニメやグッズ、パチンコなどの関連商品も含めるとマンガの市場は3兆円?どこが?具体的に何がいくらで3兆円になるのか。例えばマンガの市場が約5000億、ゲームソフトの市場が大体3000億*1。アニメはDVD市場が海外入れても千数百億*2だから、CDやグッズを入れて2000億くらいだろうか。しかも、漫画原作でヒットしたゲームやアニメって近年ありましたっけ?ハルヒは原作は小説だし、マクロスFコードギアスに至ってはアニメオリジナル企画。せいぜいらき☆すた鋼の錬金術師くらいだろうか。それだって既存の市場の中で起きたスマッシュヒット、という感じで、市場の拡大には余り寄与してないんじゃないだろうか?ゲームのヒット作だって、漫画原作の物は見あたらない。パチンコの市場が20兆円*3(といってもこれは貸し玉料)で、純利益が三兆円から五兆円といわれてる。その利益の一割くらいが原作使用料として入ってきたってせいぜい3000億。それも、やっぱり近年最大のヒットであるエヴァンゲリオンはアニメオリジナル企画で漫画原作ではない。とまあ、こうざっと数えてみると、三兆円はおろか一兆円にもなかなか届かないんじゃないの、という感じ。数字は嘘をつく、の見本みたいな数字だ。
ちなみに漬け物の市場規模が約5000億円で漫画とほぼ同等、納豆の市場規模が約1000億でアニメDVDと同じくらい。日本の新しい基幹産業に、と息巻いたところでこれが現実である。
しかも将来的にはこれを10兆円規模にすることが可能と言う。はあ、そうですか、という感じ。
あと、著者はマンガ業界におけるマーケティングのなさを嘆いて、それがマンガ業界の衰退の元凶のように語るけど、本当にそうなんかいな?ジャンプや角川商法なんて、最近はちゃんとマーケティングしているように、私からは見えるんだけど・・・。
曖昧で具体性に乏しい中では、デジタル市場や海外市場などに関しては喜々として具体的な数字を出している。だけど、たいした数字じゃない。だいたい250億円なんて、マンガ全体の市場からしたらたった五%だし、ほんの数ページ前に提示した3兆円からしたら紙くずじゃんか。今後も増えていくだろうけど、突然一千億規模とかにはならないだろうし、とてもだけどマンガの市場拡大に寄与するような可能性を秘めているとは思えない。マンガにおける、流通手段の一つにはなっていくだろうけどね。
いや、この本のテーマが、マンガの市場規模を語る事じゃなくて、「マンガを取り巻く状況が変わってきた。これからマンガはどうなるのか」という事なのは分かってるんだけど、出てくる数字がどうにもこうにも胡散臭いので、肝心の内容まで胡散臭く見えてくる。
まあ、500円ならこんなもんがんなぁ。
あ、ただ83年以降読み切りマンガの時代が終わった、というのは漫画史を語る上で重要になってくるかも。まあ、個人的には市場の衰勢にはほとんど関係ないと思うが。