たまには人工甘味料も必要

激辛! 夏風高校カレー部 (いもうと付) (スーパーダッシュ文庫)

激辛! 夏風高校カレー部 (いもうと付) (スーパーダッシュ文庫)

桐野魁は、夏風高校の名門カレー部の幽霊部員。カレーに対する情熱は誰にも負けないカレー馬鹿だが、部の本流とはかけ離れた嗜好のため目立たない存在だった。ある日、「全国高校カレー選手権」に出場するはずの部の精鋭たちが、次々に事故で負傷し大会に参加できなくなってしまう。無事だったのは、選手権に参加しない魁と、魁の幼なじみの大食い少女・紅だけだった。部の威厳とカレーに対する思いを賭け、素人同然の仲間を集め、優勝を目指す!激烈スパイシーコメディ、こっそり妹つき。

いやー、くだらなかった(褒め言葉)。
大正野球娘。 (トクマ・ノベルズedge)で鮮烈なデビューを飾りアニメ化も決まりつつも、刊行ペースがイマイチ速くない神楽坂先生の最新刊。
今までの作品では、柔らかい雰囲気の中でも男に負けじと自立しようという女の子、というのが共通のテーマだったと思うんだけど、今回はがらっと雰囲気を変えてきた。
それにしてもくだらない小説だった。しかし、くだらないことをくそまじめにやる、というのはギャグの基本でもある。そう、主人公たちはカレーに関してはくそまじめなのだ。あるものはソース至上主義、あるものは激辛通、あるものは単なる大食い。ポリシーはそれぞれだが、みなそれぞれのカレー愛を持っている。基本的にカレーを嫌いな日本人は少ないと思うので、この時点で題材としては勝利を収めている。カレー蘊蓄を読むだけでもかなり楽しいはずだ。ただ、ラストのカレーうどんはちょっと安直過ぎなきがする。
そして、辛口のカレーに相反するようにラブコメ要素はかなり甘口。幼馴染み以外にも、部活の先輩、そして妹など主人公を取り巻く女性陣はまさにライトノベルのテンプレそのもの。いわば人工甘味料みたいなものだが、かえってそれが美味しく感じることもある。人間には駄菓子も必要なのだ。
40分程度で読めて、全く頭を使わなくてよくて、読んでいる間はそこそこ楽しい小説が必要なら、間違いなくお薦めである。そして、経験上そういう場面は結構多い。
あと、「征服娘。」の二巻まだですかね。