去年最後に読んだ本

不全世界の創造手(アーキテクト) (朝日ノベルズ)

不全世界の創造手(アーキテクト) (朝日ノベルズ)

物作りを愛する少年・祐機の夢は、自分で自分を複製するフォン・ノイマン・マシンの実現。地方都市で才能をもてあます彼の前に天才投資家の娘・ジスレーヌが現れた。「あなたの力と未来に投資させて」。二人は強力なマシンと資金を武器にして、世界生産を支配する国際組織「GAWP」に立ち向かう。創造性に満ちた、真に豊かな地球は誰が造るのか?リアルSFの旗手が書き下ろす、近未来青春物語。

朝日ノベルスを見る度に、今は亡き朝日ソノラマを思い出す・・・。
いつもの小川一水でした。非常に楽しかった。
小川一水という人は、多分物語のためならリアリティとかどうでもいいと思っている人で、そのために合わない人は本当に合わないんだろうなあ。
今回も突っ込みどころはたくさんあるんだけど、とにかく楽しい。壮大なプロジェクトがとんとん拍子で進んだり、大きな壁を乗り越えたりするのは本当に楽しいものなのだ。そのへんは、どんなに胡散臭くてもプロジェクトXが面白いのと同じだ。
あと、人類の明るい科学未来を今、高らかに書けてしまう小川一水は本当に真面目でいい人なんだと思う。ラストのあれは、普通に考えたら荒唐無稽かも知れないけど、私は少し涙が出た。
こういう人類の未来に対する希望を捨てさせない小説を、恐慌に見舞われ戦火の絶えない2008年最後に読めたのは素直に嬉しかった。