風の邦、星の渚

風の邦、星の渚―レーズスフェント興亡記

風の邦、星の渚―レーズスフェント興亡記

21世紀日本SFの旗手、小川一水の最新刊。
帯を見て初めて知ったが、初のハードカバー。
舞台は14世紀のヨーロッパ、ドイツ地方。島流し同然で辺境の地に派遣された騎士ルドガーは地球外生命体「レーズ」と出会う。ルドガーはレーズの力を借り、辺境の地を自由貿易都市の建設を始める。しかし、いずれ辺境伯ハンザ同盟の怒りを買い、同じく異星生命体と接触を持ったデンマーク国王との戦いへとつながっていく・・・・・・。

小川一水お得意のプロジェクト小説。何にもなかったはずの辺境に、とんとん拍子に都市が建設されていく様子は、読んでいて非常に楽しい。リアリティが薄い?そんなの知ったことか。
そして、今回は今までよりSF要素はちょっと薄め。歴史SFだからアッと驚く新技術は登場しないし、エピソードの一つ一つは実にオーソドックス。だけど、その分物語の縦糸となっているローマ時代が、実にそれっぽく書かれていて、読者を飽きさせない。大きな物語がしっかりしていて、その上に横糸として都市建設の巨大プロジェクトが、ラブロマンスが、大航海冒険譚が張り巡らされている。
本当に面白い小説だった。

今年は国内SFが不作なイメージがあったが、なになに、年末に大物が待っていた。