劇場版花咲くいろは HOME SWEET HOME

ユナイテッドシネマ金沢で「劇場版花咲くいろは」鑑賞。先行上映初日で、原動画は緒花のアップでした。

88点。傑作。
個人的に、テレビ版で抱いていた不満点が全て解消されました。
私はテレビ版のブルーレイを全て揃えているくらいにはこのアニメが好きなんですが、テレビ版に2点、大きな不満を抱えていました。
一つ目は、物語の縦糸が弱いこと。
花咲くいろはの原作チームの一人で、シリーズ構成(脚本家チームのまとめ役)である岡田磨里作品共通の傾向として、「親子関係」とか「過去の自分と現在の自分」というような物語の縦糸と、現在の主人公を取り巻く恋愛・友情・人間関係という横糸で物語を組み立てていく、というのがある(気がする)。出世作である「true tears」とか、近年の代表作「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」なんかはそれが物凄く奇麗に成功を収めた例だと思う。
ただ、「花咲くいろは」はそういった傑作と比べると、物語全体の語られ方が雑だったと思う。祖母と母の関係が序盤では全く語られないし、2クール目に入って各キャラの掘り下げに話数を割いたために、ラストに向けてのドラマが駆け足になってしまった。
あともう一つは、主人公である緒花が全く成長しないこと。
一見すると、緒花の成長物語のように錯覚してしまうけど、よくよく観ると、緒花って物語の最初と最後でほとんど変化しないんですよ。
三人娘の中で一番大人だし(要するに諦めが良くコミュニケーション能力が高い)、最初から前向きで一生懸命で何事にも動じない。人間強度が非常に頑強なので、変化しようが無いのです。
しかし今回の劇場版で、その不満点が全て解消されたうえで、ドラマとしてものすごく奇麗にテレビ版を補完してくれました。
16歳の緒花と16歳のときの母親を交互に対比させながら描くことによって、「10代のときの母親も人生に迷い、16歳のときに大きな転機を迎えた」→「緒花にもこれから何らかの転機が訪れるかもしれない」と思わせてくれた。「緒花はまだ若く(もっと言ってしまえば幼い)、そして若さというのはどんな可能性だって広がっているということなんだ」という圧倒的な青春讃歌で、若者への応援歌。

上映時間が約70分と短く、テレビ版未視聴者への配慮(キャラ紹介とか)は全くないので、オススメはしづらいのですが、傑作だと思います。テレビ版を観ている人は絶対に観た方が良いでしょう。