「ガール」

70点

ユナイテッドシネマ金沢で「ガール」を鑑賞。
ベストセラー作家奥田英朗の人気小説を原作に、現代を生き抜くアラサー・アラフォー女性の姿を描く。

30代から40代の独身女性のみを超限定的にターゲットに据えた感のある映画で、なんでこれを公開初日に観に行ったかというと、監督が深川栄洋だから。信者と言ってもいいくらいの大ファンでして、もう「深川監督の作品が好き」というよりは、「深川監督の映画の撮り方が好き」というレベル。
深川監督は76年生まれの35歳、そして既に20作品以上でメガホンを振っている多作な監督。ここ数年日本映画界では何人もの若手監督が台頭し注目を浴びているけれど、そんな若手達の中では一番オーソドックスな映画を作る監督だと思う。女優を綺麗に撮るのが巧くて、そういう意味では古き良き日本映画の遺伝子を最も色濃く受け継いでいる若手監督かもしれない。「真木栗ノ穴(2007年)」や「狼少女(2004年)」みたいなややシュールな異色作から出世作「60歳のラブレター(2009年)」みたいな感動作、「半分の月がのぼる空(2010年)」のような若者向け恋愛映画と作風も幅広くて、しかし何を作っても独自の色のようなものを感じさせてくれる映画監督。個人的には「半分の月がのぼる空」がオールタイム・ベスト級に好き。

というわけで最新作「ガール」も公開初日に行ってまいりました。豪華キャストと、以前からかなり広告等が展開していたせいか、客入りはまずまず。ここ1・2年は「白夜行」「神様のカルテ」など大資本による大作で堅実な数字をたたき出している深川監督だけに、観る側もある程度の安心感を持っている感じ。

肝心の中身はというと、まあこんなもんかなあ、という感じ。必ずしも傑作ではないのですが、誰が観てもある程度の満足感は得られると思う。アラサー・アラフォー女性向けの応援歌、もっと言ってしまえばおとぎ話なので、終盤の余りにもご都合主義的な展開も愛嬌のうちだと思う。こういう映画にリアリティーとか、求める方が野暮。アラフォー女性の痛々しさのみを切り取った「ヤングアダルト」みたいな作品を見せられてもなかなかにキツイので(当然嫌いじゃないんだけど)、これでいいんじゃないのかなあ、と思う。
そして、随所に深川監督らしさが見え隠れしていたのも、ファンとしては嬉しかった点。主人公の一人・武田聖子(麻生久美子)が夫である博樹(上地雄輔)と歯磨きをするシーンとかは、もの凄く印象的かつアクロバティックなカメラの使い方をしていて、何でも無いシーンなのに観客はみんな驚くと思う。
役者陣の中では、主役の四人以上に、滝川由紀子(香里奈)の会社の先輩である光山晴美(檀れい)が輝いていた。29歳の由紀子が目指すロールモデルとして登場するんだけど、完全に主役を食っていました。この檀れいを観るためだけでも、入場料分の価値はあるんじゃなかろうか。
あと、主役を演じた香里奈に関しては、去年「実写版あしたのジョー」「実写版 うさぎドロップ」と、2作立て続けにゴミ映画でヒロインを演じていて、相当悪いイメージを持っていたんだけど、「ガール」を観て「おっ、悪くないじゃん」と思いました。一応、それなりに演技ができる人だったんだなあ。

決して傑作ではないんだけど、それなりに楽しいし、何よりも元気になれる映画です。
個人的には70点(深川ファン的には85点)。