映画「っぽく」はあるけれど、「映画的」 ではない


 ニコニコ動画で視聴。第1話は二話分、1時間近い長時間編成。
 一応原作ファン、と言って良いと思う。空の境界月姫も同人で発表された直後に読んだし、Fateはstay/nightもhollow/ataraxiaも発売日に買ってプレイしたし、本作の原作に当たるzeroも単行本・文庫版ともに購入して読んだ。各種アンソロジーもチェックしてるし、月姫Fate共にアニメ版も視聴済み。
 んで、1話を観た感想だけど、うーん、どうなんでしょう。いや、原作ファンとしては大満足なのだけどね。ただ、原作を読んでいなかったら2話を観たいとは思わなかっただろう。
 やたら遠くにカメラを置いた長回しが多用されているんだけど、全くと言って良いほど演出的な必要性や意図を感じない。映画マニアの視点から言わせてもらえば、長回しが多ければ映画なのでは断じてない。長回しが効果的な演出と共に使われている映像作品が映画的なのだ。
 というわけで、本作の第1話は「無駄な努力」が多すぎる。ぐるぐる廻りながら話すシーンとか、屋外にカメラを置いて窓越しに中を映すシーンとか、演出的な必要性が全く理解不能。労力ばかりかかって、作品に利する部分は全くと言って良いほどないと思う。
 1時間近くかかって、各陣営の現状を台詞で説明するだけ、という脚本も拙すぎる。アニメは小説ではない、ということを微塵も理解していない。原作ファンにしか理解できないテクニカルタームを連発しながら、あれだけの説明ゼリフを並べても、おそらく来週まで台詞の中身を覚えていられる視聴者は1%もいないだろう。聖杯戦争のルールなんて、原作ファンはみんな知ってるし、原作未読者はあんな説明されてもちんぷんかんぷんなのだから、それこそ大ざっぱに端折ってしまっても良かったのではないだろうか。また、脚本の不備としては主人公が誰なのかすら全く分からない、というのもある。1話だけでは、視点がいくつもある上、一般人が感情移入加能なキャラがウェイバーしかいない。これでは、原作未読者の中には彼が主人公だと勘違いする人も大勢いるのではなかろうか。
 どうせTYPE-MOON関連作品は原作ファンしか観ないし原作ファンしか買わない、と言ってしまえばそれまでだが、もう少し新の意味で映画的な作りをして欲しかった。これでは、単なる虚仮威しに過ぎない。