最近観た映画

うさぎドロップ」1/10点

 イオンシネマ金沢で鑑賞。
 原作ファンで、連載時は全て雑誌でチェックしたし、単行本も全巻購入済み。
 世間では、キャスティングが、とか原作改変が、とか色々言われていますが、はっきり言ってそれ以前の問題。普通に出来の悪いゴミ映画でございました。
 とにかく、はっきりしない映画でした。
 まず、一体誰に向けて作っているのか? カップル向けか、家族向けか、原作ファン向けか、はたまた新規層を開拓したいのか。「どういう映画にしたいのか」というのが全く見えない。
 まず、原作の話をすると、原作(の第一部)ははっきり言って甘ったるい子育てマンガなわけですよ。子育てで一番大変な乳幼児期が描かれないし、大吉の職場は子育てに理解があるのかあっさりと残業の無い部所に転属させてくれる。周囲の年配者達も理解があって大吉を何かとフォローしてくれる。それになりよりも、りんちゃんが躾の必要がほとんど無い聡明な良い子なわけです。
 そんな現実離れした甘ったるいシチュエーションを用意された上で「子育ては素晴らしい」と言われても説得力は全く無いので、原作はあえてかどうかは分からないけれど説教臭さは皆無。ひたすら『りんちゃん萌え』で乗り切るわけです。要するに、子育てマンガの皮を被ったロリコンマンガなんですよね(アニメは、あえてロリコンアニメ側に振り切ることで成功している)。
 しかし、映画のスタッフはさすがにそんなロリコンマンガをそのまま実写化したのではファミリー層を取り込めない、と判断したのか中途半端に子育ての大変さを描く。ならその方向に突っ走れば良いのに、なぜかコウキママの設定を会社員からモデルに改変してしまう。さらには原作には無い大吉の妄想シーンを挟んだりと奇妙に浮き世離れしたフィルムに仕立ててしまっている。
 フィルム全体での意思統一が全く持って為されていない。
 特に、ラストで仕事をほっぽり出してみんなで(それも会社の同僚も含めてのみんなだ)りんとコウキを探しに行ってしまったりと、とにかく脚本がメチャクチャ。さらにはラストで「りんから癒やされていたのは自分の方かも」みたいなことをモノローグで言わせてしまう始末。
 要するに、「原作の甘ったるさとリアリティの無さは原作ファンはともかく家族連れにはウケない」→「物語が湿っぽくなった分、華やかさを出したい(コウキママを香里奈にして職業もモデルに)」→「とにかく収拾が付かなくなったので男手による子育てを礼賛しておけば女性の皆さんも溜飲が下がるだろう」というようなプロセスで映画が作られたのではなかろうか? はっきり言って、観客を、映画を嘗めすぎである。
 こんなフィルムを作ってしまう人がいる、という事実が映画ファンとして悲しい。
 文句なしで、今年度ワースト暫定第1位。こんな映画は観てはいけない。

こち亀 the MOVIE かちどき橋を封鎖せよ」4/10点
 ユナイテッドシネマ金沢で鑑賞。
 驚くべきことに、客は私一人。いや、石川県で年100本以上映画を観てるとたまにあるんだけど、週末のレイトショーで一人だったのは初めてでした。
 えーっと、想像していたよりは遙かにマシな映画だった。粗はそれこそ腐るほどあるんだけど、問答無用の駄作、というほどではない。むしろ、人情娯楽映画としてそこそこよくできているのではないでしょうか? 少なくとも、タイトルの元ネタになった某刑事物と比べれば一億倍くらいマシだったと思います。
 本作において、最大の問題点は香取慎吾に「演技」をさせてしまったことだと思う。
 両さんは狂人で超人で、実写で彼を演じられる人間って、現実世界にははっきり言って存在しない。ということで、「こち亀」に対抗しうる国民的大看板である「SMAP」のメンバーである香取慎吾を起用したのは、有りか無しかなら「有り」だと思う。両さんの原作イメージを再現するのは不可能なので、大スターである香取慎吾のスター性とキャラクターでとりあえず2時間を乗り切ってしまえ、という作戦だ。それなら、アイドル映画として無くは無い選択肢である。
 ところが、本作では香取慎吾が中途半端に両さんを演じてしまっている。はっきり言って、素人に毛が生えたどころか、素人同然の演技力しかない香取慎吾である。彼が両さんを演じられるわけが無い。声を頑張って両さんっぽくしているせいで、滑舌がはっきりせず聞き取りにくい。さらには、顔つきを頑張って両さんに似せているせいか自分に台詞が無いシーンで視線が定まらず、きょろきょろする有様。テレビならいざ知らず、劇場のスクリーンは情報量が多い。ここまでのみすぼらしさをさらしてしまうとは、彼も作り手も思いも寄らなかったであろう。
 でも、そんな香取慎吾の醜態に目を瞑れば、人情物としてそこそこよく出来ているとは思う。何よりも、横田のおっさんの人物造形と演じる平田満が素晴らしかった。彼の演技と『顔』を観れただけでも最後まで我慢して座席に座っていた回があった。
 平田満の『顔』に+3点。

 追記
 かちどき橋は閉鎖もされなければ、開くことも無いです。ラスト開くは開くんですが、ショボイCGとミニチュアです。多分、予算の都合と思われます。


「シャンハイ」3/10点

 イオンシネマ金沢で鑑賞。
 うーん、つまらなかった。
 大戦前夜、各国の租界が混在しカオスな魔都と化したシャンハイ。主人公の米国諜報員・ポールは同僚で親友であるコナーの死の真相を追い求め、中国人実業家アンソニー、その妻アンナに接近し、日本軍人タナカ大佐へと接触する・・・。
 これは私の読解力が足りなかったせいかもしれないけれど、どんなお話なのか理解するのがかなりしんどかった。
 当時の世界情勢、シャンハイの勢力図、及び主要キャラの人間関係が説明不足。いや、説明不足と言うよりは説明が下手くそ。その辺を想像で補いながら、さらには決して出来が良いとは言えない画面を見続けるのは本当に苦痛だった。日本人の私ですらそうだったのだから、アメリカ人の観客とかはもっと分からなかったのではないだろうか。
 人間関係がとにかく説明不足。愛憎関係が非常にわかりにくいために、ラスト近辺で「結局全部女がらみかよ!」と思わず脱力してしまった。思い返せば伏線っぽいやりとりもあったんだけど、どうにもこうにも・・・。
 とにかく、出来の悪い映画の見本を見てしまった。100円レンタルですらオススメできない愚作。