TVアニメスケールが残念な当たり障りのない映画

借りぐらしのアリエッティ

 ユナイテッドシネマ金沢にて初日のレイトショーで鑑賞。
 結論を言えば、エントリータイトルのとおり期待はずれ。原作は小学生の時に大好きだった児童文学で、非常に期待していただけに残念な出来。
 私は権威主義者的なところがあって、『映画』って『アニメ映画』よりも上位にあると思っている。例えば最近では、「時をかける少女」は『映画』だったけど、「サマー・ウォーズ」は『アニメ映画』だったと思う。逆に、「どれみと魔女をやめた魔女」はTVだったけど『映画』的な感動に充ち満ちていたと思う。アニメが映画になるには多くのハードルがあるようだけど、残念ながらそのハードルを乗り越えた作品はあまり多くはないようだ。これは、まんが映画とTVアニメという、異なる二つのアプローチでその文化を発展させてきた国の背負ってしまった枷でもある。だからこそ、「映画を観た」という満足感を与えてくれるアニメ映画に出会ったときの感動は代え難い物になる。
 そういう意味では、アリエッティは「アニメ映画」以外の何ものでもなかった。確かに画面のクオリティはもの凄く高いし、生命の共存やら多様性といった宮崎駿的なメッセージなど、ジブリ的な映画ではあった。だけど、トータルとしてのクオリティはTVの二時間スペシャルだったら絶賛したけど映画としては・・・。
 劇場作品なんだから、お話も画面ももっと起伏を持たせても良かったと思う。アリエッティは確かに可愛かったけど、なんだか淡々とし過ぎていて、小人が生きていく大変さをもうちょっと映像で表して欲しかった。キャラのアップが多いせいで、小人の小ささ(とそれが引き起こす困難)がが表現しきれていない。こういう大きさが違うものを描きたいときって、カメラをどこに置くかって重要だと思う。あくまで人間の目の高さ、遠さに置いて小人の小ささを表現するのか、小人視点に置いて人間世界の大きさを表現するのか、どちらかだと思うんだけど、この映画はその辺が実に無神経。危険を冒して人間の家に借り(狩り)に出かけるシーンなのに、スケール感は裏山探検程度しか感じられない。
 あとは、小人達が基本的に淡々とミッションをこなしていくため、演出に全く起伏がない。作り手は小人の静かな日常が人間の気まぐれで壊されていく、という不条理を描きたかったのかもしれないけど、ちょっと上手に表現しきれていなかった気がする。
 私みたいな大人は良いとして、ジブリがターゲットにしていると思われる子供相手にこれではしんどいんじゃないかなあ。小学生だったら、「なんかアリエッティが引っ越すことになっちゃったみたいでかわいそう」という程度の感想しか持たないんじゃないかなあ。
 息子に作らせて大失敗した「ゲド戦記」で懲りたのか今度は内部スタッフの有望株に作らせたみたいだけど、若手に任せてこの程度の作品しか出てこないようだと、ジブリの今後が危ぶまれる。