家族の死を看取ると言うこと


 金沢のシネモンドで鑑賞。
 人間の死に関わる、ということの大変さを描いた映画。と書くと「おくりびと」を連想する人が多いかも知れないけれど、ああいう映画ではなくて、ひたすら静かに人間の死語の始末について描いた、しかもそれでいて素晴らしく美しい映画。はっきり言って傑作だと思う。
 主人公はとある老婆とその子供達。老婆は偉大な芸術家であり蒐集家でもあった叔父からそのコレクションとアトリエ兼屋敷を受け継いでおり、その三人の子供達もその偉大な大叔父を尊敬し、母を愛し、屋敷と美術品に誇りと愛着を感じている。
 そして、ある日その母が死ぬ。母親は生前から美術品と屋敷は処分し、そのお金は三人で仲良く分けるよう遺言を残していた。そして、遺産相続争いが起きることもなく、美術品達は美術館に寄贈され、屋敷は人手に渡り、子供達は幾ばくかの遺産を現金で手に入れる。
 ただそれだけのお話なんだけど、人間の存在がどのように亡くなり、どのように思い出に変わっていくのか。克明に描かれる遺産処理と『母の思い出』にそんなことを痛切に考えさせられた。
 ラストシーンで、屋敷が人手に渡る直前に不良学生の孫娘が友達を集めて開いたパーティが今でも目に焼き付いている。パーティはアルコール・ドラッグ・セックス何でもありの酷いもので、それが美術品の引き払われたがらんとした屋敷でとりとめもなく行われる。老婆の死に引き続いて、最後にこの「屋敷の死」を持ってくる悪趣味な演出だと一瞬早合点したが、その後ボーイフレンドに孫娘が祖母の思い出を語るシーンでハッとなった。こうして思い出になることで、人間の死は最終的に救われるのだ。そして、これこそ老婆が生前望んでいたことに他ならないのだろう。
 実に静かなフランス映画だけど、本当におすすめの映画です。