今年は準決勝に能登から2校残っている

 今年の高校野球石川県大会が面白い。家にテレビがないので、公共施設などにおいてあるテレビ(たいていローカルケーブルテレビの映像が流れている)で甲子園県予選を観戦しているのだが、今年は能登からベストエイトに三校が名を連ねた。羽咋工業、七尾高校日本航空石川の三校。ちなみに、90年を超える高校野球の歴史で、能登から甲子園に出場したチームは未だ存在しない。
 というわけで、今日は半日石川赤十字献血センターで野球観戦*1したんだけど、もの凄く面白い試合だった。
 観たのは石川航空×遊学館高校、羽咋工業×星陵高校の2試合。
 遊学館はご存じの方も多いと思うけど、近年急激に力を付けて、甲子園ベスト8まで行ったこともある強豪校。今回も第一シードの優勝候補。星陵高校は松井秀喜の母校で、私立金沢高校と共に2強時代を築いてきた伝統強豪校。しかもここ数年中等部が全国大会で活躍(去年は全国制覇)、七十人の部員を抱え分厚い選手層を誇る。シードこそ取れなかったけど、第二シードの輪島高校を破った野々市明倫を八回コールドで下してベストエイトに勝ち残ってきた。当然堂々の優勝候補。
 対して日本航空石川は私立、羽咋工業は県立高校。ブラスバントなどの応援もなく*2、スタンドには控え部員よりも父兄達が目立つ。選手達の体も、お世辞にも屈強とは言い難い。体躯だけなら相手校のベンチ入りすらしていないスタンドメンバーよりも細い感じだ。

強豪校故の焦り

 まず、午前中に石川航空対遊学館が行われた。
 はっきり言って、下馬評は完全に遊学館有利。以前練習試合で33-6という大差で相手にならなかった、という事実がそれを表している。しかし、30℃を越える熱さ・湿気のせいか遊学館はなかなか決め手に欠く試合運びをしてしまう。なんとか一点を取る物の、低めに集めた投球と堅い守備に阻まれてなかなか追加点を取れない。そして、ドラマは九回の裏に起こった。なんと九回裏ツーアウトから四球でランナーを出すと、チーム2本目のヒットはタイムリーツーベース。それまで1安打に押さえられていたバットが突如火を噴いた。遊学館の守備の焦りもあった。しかし、何というドラマ。
 そして、十回裏、四球→送りバント→ヒット→イムリーエラー。なんと、第一シード遊学館のまさかのサヨナラ負け。
 はっきり言って、チーム力は明らかに遊学館の方が上手だった。ヒットも出るし、小技も上手い。しかし、一点先に獲ってしまったのが裏目に出たのかも知れない。一点しか取れない、というのがかえって強豪校故の焦りを誘発してしまったのだろう。七回以降は明らかにチームが浮き足立っていた。それが最後の綻びに繋がってしまった。
 サヨナラの瞬間、勝った方も負けた方も、「え?」という顔を一瞬浮かべていた。一瞬遅れて泣き崩れる遊学館ナインと、戸惑いと喜びの入り交じったうれし涙を浮かべていた日本航空石川。うーん、野球って面白い!

羽咋工業に勝たせてあげたかった

 基本的に石川県には地縁が全くないので、どちらかを肩入れして応援することは全くないのだけど、この試合だけは羽咋工業を応援してしまった。
 羽咋工業のエース疋島は1回戦から一人で投げ抜いてきて、すでに500球近く投げてるはず。解説によると、控え投手は実質いないらしい。しかし常に笑顔を絶やさず飄々と投げる様子が素晴らしい。あと、疋島のワンマンチームではなくて、キャッチャー(名前忘れた)のインサイドワーク・肩が良くて、内野陣をほぼ完璧にまとめ上げていた。捕手にしては体が細いので、大学で筋トレから徹底すれば良い選手になりそう。羽咋工業は監督を含めて笑顔の絶えないチームで、野球マンガみたいだな、と思った。対して星稜は完全に戦う集団。もはや甲子園以外見えていない、といった感じ。整列の時点で、軍隊みたいな星稜に対して、どこか朗らかな羽咋工業、という対照的なチームの雰囲気。体の太さも同じ高校生でここまで差が出るのか、というくらい星稜の方が太い。
 しかし、なんと先制は羽咋工業!星稜のミスにつけ込んで、見事に得点を奪う。基本にがっちり忠実な星稜に対して、みんな変則気味の打法なのが観てて楽しい。小技もあんまり上手くなくて、極端なオープンスタンスで豪快にバットを振り回すクリーンナップに、球場もどよめく。下位打線は下位打線で、ホームベース近めに立って死球も辞さず、という感じ。ただ、反って主審の印象を悪くしたのか、悪い方に審判の目がごまかされてしまったのか、星稜攻撃時に比べ明らかにストライクゾーンを外角に広く採っていた。プロ野球だったらネットで大批判されるレベル。ちょっと審判のレベルが低かったかも知れない。
 疋島はランナーは出すけどのらりくらりとカーブを低めに集めて点を許さない。ストレート(はっきり言って、そんなに速くない)はひたすらボール気味のところに放って、低めのカーブで押さえていく。守備もそんなに上手くないけど、なぜかここぞというところで真っ正面を突いて、不思議と点が入らない展開。そして六回を終わって、「まさか・・・」といった雰囲気が球場を包む。遊学館のまさかの敗退も、この雰囲気作りに一役買っていたように思う。
 しかし、やはり累計600球を投げ続けてきたエース、疲れが見え始める。特に五回からは雨もあって、頼みのカーブが明らかに高めに浮き始めた。そして七回、小雨が横殴りの雨に変わる中、バテバテの投手の足下にバント攻勢。もう、伝統強豪校のプライドをかなぐり捨てての攻撃。セーフティバントで出塁しランナーを送りバントで進めて、トドメのツーベース。その後も追加点を重ねて、勝負あり。ただ、見終わって不思議と爽やかな気持ちになれた。伝統強豪校にあそこまで勝利に拘らせたのだから、羽咋工業もすごい。あのバッテリーには、今大会最優秀バッテリーの賛辞を送りたい。

能登同士の準決勝

 別球場では、なんと七尾高校がベスト4進出。七尾高校能登で1番、県内でも屈指の進学校。文武両道で毎年そこそこのチームは作るんだけど、進学校の悲しさ、ベスト4に残ったのは11年振りとのこと。
 準決勝の組み合わせは
七尾×日本航空石川
小松工業×星稜
 能登から確実に一校決勝に残るんだけど、個人的には七尾高校に勝たせてあげたい。七尾高校は県立進学校で、先の震災も被災している(これは輪島にある日本航空石川もなんだけど)。今回決勝に残って、さらに秋の大会でそこそこの成績を上げれば、21世紀枠春の甲子園に出場できるかも知れないのだ。本当は決勝で勝ち上がって夏の甲子園に行ければ良いんだけど、正直チーム力を考えると・・・なので、ちょっと来年の21世紀枠に期待。
 準決勝は明日なので、ちょっと観に行こうかな。

*1:当然献血もしました。他の日は県庁やら定食屋やら、いろんなところで観戦してます。いや、直接観に行けばいいんだけどね。

*2:夏休みとはいえ、能登から応援団を呼ぶのは野球強豪校でもない限りは難しいだろう