今回は野球無し
大正野球娘。―帝都たこ焼き娘。 (トクマ・ノベルズEdge)
- 作者: 神楽坂淳,小池定路
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2009/06
- メディア: 新書
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大正十四年、秋。東邦星華高等女学院に通う小梅は巴から新宿でランデヴーしないかと誘われた。不良が多いとウワサの新宿を、どきどきしながら歩く小梅と巴。その最中、乃枝によく似た女の子と出会う。女の子は乃枝の従姉妹で紅葉という。「東京にはおいしいものがないから」と大阪から屋台対決をしに東京まで来たらしい!屋台での東西対決を挑まれ、受けて立つ決意をする桜花会。しかしお嬢様たちには庶民が使う「屋台」がどういうものか分からなくて…。話題沸騰、待望の大正乙女たちの奮闘シリーズ第三弾。
来週からアニメも始まる大正野球娘。の最新刊。
今回は次巻へのつなぎ的なお話で、野球は無し。ただ、その分街の様子や女学生たちのディティールが詳しく書かれ、視覚的に読者を楽しませてくれる。今回が一番楽しい、と感じる読者も多いんじゃないかしら。女の子野球モノマニアの私としてはちょっと物足りないんだけど。
今回は、作者の最近作「激辛!夏風高校カレー部」に引き続き料理対決物。屋台対決の時に、一銭洋食(現在のたこ焼きとお好み焼きの中間のような食べ物)で勝負することになった主人公たちが、何とか知恵を出し合い頑張る様子は実に微笑ましい。最後は明石焼きで逆転、というベタなオチなんだけど(ネタバラシのため白黒反転)、この小説の肝は大正ロマンの中で一時の朗らかな青春を過ごす少女たちを眺めることなので問題なし。本格的な野球対決が描かれるであろう四巻が今から非常に楽しみ。遅筆な作者だけど、首を長くして待ちたいと思う。
参考
- 作者: 弥生美術館,中村圭子
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2005/01/14
- メディア: 単行本
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- 作者: 佐藤八寿子
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2006/09/01
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- 作者: 内田静枝,弥生美術館
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2005/04
- メディア: 単行本
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あと、一応女子野球の歴史について補足。
1894年(明治27年)に中馬庚がベースボールに「野球」という訳語をあてて、日本における「野球」の歴史が始まる。その後、正岡子規が様々な野球用語を邦訳し、野球の普及に努めたのは有名な話。その十数年後、1910年(明治43年)に佐伯尋常小学校女子部で初の女子野球チームが誕生。
そして1917年(大正6年)、野球王国愛媛の今治高等女学校(現今治北高校)に日本初の女子野球部が発足される。最初は、テニスのラケットとボールを使い、着物にたすき掛け・袴でプレーしていた。その1年後、男子チームである松山中学との練習試合が計画されるも、周囲の反対にあい中止。しかし女子野球部は着実にその数を増やし、さらに1年後の1919年には初の全国大会が名古屋で開かれる。このことから、大正14年が舞台の「大正野球娘。」がそれほど突拍子もないお話ではないことが分かる。
しかしその後、戦争によって女子野球は一気に衰退してしまう。そして戦後、女子野球リーグが発足したがほどなく消滅している。
似た競技であるソフトボールに押され、なかなか競技人口が増えない中で、80年代に軟式野球の、90年代に硬式野球の連盟が結成され大会も開かれるようになる。21世紀に入ると片岡安祐美(茨城GG)や吉田えり(神戸)といった男子に混じってプレーするスター選手が登場し始めているのは皆さんもご存じの通り。
個人的には女子が男子に混じってプレーするのは競技として健全な状態とは言い難いので、少しでも女子競技人口が増えて、女子野球リーグが設立されることを望む。