最近の一迅社文庫は頑張っている

ペンギン・サマー (一迅社文庫)

ペンギン・サマー (一迅社文庫)

幼なじみの相馬あかりに付き合わされて、街に古くから伝わる伝説「クビナシ様」を探すため、近所の「白首山」へ登る羽目になった東田隆司。しかし。街で暗躍する謎の秘密結社「赤面党」。一部でささやかれる、白首山に眠るという埋蔵金の噂。そして、ペンギン…。様々な要素が絡みあい、事態は思わぬ方向へ…。そんな、ひと夏のトンチキな物語。

 タイトルが去年復刻した大傑作SF「エンジン・サマー」に似ていて、しかも帯の推薦コメントがその「エンジン・サマー」の訳者大森望。これは買わずにはいられまいて。
 内容は「エンジン・サマー」とは全く関係ないし、そう言う話でもなかったけれど、かなり練り込まれたジュブナイルSFだった。物語は様々な視点から語られ、いくつかの謎を読者に与えつつ、最後は一つの結末に収束していく。作者のデビュー作「タマラセ」は正直つまらなくて、2巻くらいで挫折してしまったんだけど、これはなかなかの傑作。
 先日読んだ「星図詠みのリーナ」もそうだけど、一迅社文庫はこういった路線で今後行くんだろうか。個人的にはうれしいのだが、商業的にはどうなんだろう?ポストソノラマ文庫的な存在になってくれたら個人的には言うこと無いのだが。
 そういえばこれを読んでいて気になったのだが、一迅社文庫は行間が広くてページの端まで行が詰まっているのだが、少々読みにくいので改善して欲しい。あと、最近のライトノベル全般に言えることだが、254ページしかない文庫が620円(税込み)は高いと思う。