漁師になった男たち

漁師になろうよ―すてきな「海の男たち」の生き方 (BE‐PAL BOOKS)

漁師になろうよ―すてきな「海の男たち」の生き方 (BE‐PAL BOOKS)

なまこのひとりごと

なまこのひとりごと

 最近漁師に興味がある。いや、これでは少し言葉が足りない。実は、最近本当に漁師になりたいと思い始めている。
 私は来年で30歳。今は奨学金(ようは借金だ)と学費免除で大学に在籍している。今まで借りた奨学金は約一千万円。今まで払っていない国民年金とあわせると、1,200万円ほどの借金を国家に対して背負っている。しかし、それも今年まで。今年で博士課程3年目なので、来年度以降も大学に在籍するには何かしらの資金を引っ張ってこなければならない。そして、今行っている研究に対して、そこまでの魅力を感じなくなっているのも事実。
 現在、地方の駅弁大学の大学院課程は、高学歴ニートワーキングプア量産工場になっている。金沢大学にもたくさんの博士課程在籍者がいるが、彼らがそれなり以上の職を得た、という話はほとんど聞かない。
 というわけで、突然かなりの危機意識に目覚め、実は二月頃から少しずつ就職活動的なことを始めている。そして、様々な職種の就職説明会に参加して、一番ピンと来のが漁業就業フェアでの説明会だった。以前能登に行ったときに、海の近くで生きるのも悪くない、と心の底から思ったのだが、説明会で漁師さんの話を聞いてかなりぐらりと来た。
 しかしまあ、ただ何となくで就職活動をしてしまうほど粗忽者でもないので*1、最近市立図書館で漁師に関する本を片っ端から読んでいる。そして、そんな中でも参考になったのがこの2冊。
 「漁師になろうよ」は、様々な経緯で漁師になった男たちのインタビュー集。田舎でスローライフ、的な虚飾に満ちた本とは違って、漁の厳しさと楽しさがかなり肉厚な言葉で語られていく。日本各地の漁港の漁師が余すところ無く登場し、しかも彼らの家族構成や年収まで明かされていて非常に資料的価値が高い。分かることは、漁師は3K(きけん、きつい、きびしい)の非常にしんどい仕事だが、それなり以上に愉快な人生を歩めそうな仕事だということだ。少なくとも一次産業の中では一番「食っていける」職業なのは間違いない。
 「なまこのひとりごと」は、東京で脱サラした若者が奥能登で漁師として一本立ちするまでのドキュメンタリー。どなられ、怒られ、何度も挫折し、それでも海に生きる青年は、田舎の荒っぽい漁師たちとの人間関係に悩み、次第にそれが楽しくなり、能登の男として溶け込んでいく。海難事故の捜索では海上保安庁や警察の態度に憤慨したりと、厳しく危険な面も描かれる。能登での漁師の生活がかなり飾らずに綴られていて、かなり参考になった。
 とりあえず、今月また福井で漁業就業者説明会があるので、それにも行ってみようと思う。

*1:この中途半端な臆病さが私の最大の欠点でもある。