なんともスローな出だし

プロバビリティ・ムーン (ハヤカワ文庫 SF ク 13-1)

プロバビリティ・ムーン (ハヤカワ文庫 SF ク 13-1)

 先日読んだ短編集が素晴らしかったので、長編も読んでみた。
 うーん、三部作の一冊目ということもあってか、実にスローな出だし。
 物語は、主に三つの視点と場所から語られていく。
 一つは、星外種族フォーラーとの戦いを続ける地球の宇宙艦隊。もう一つは、謎の遺構が発見された世界(ワールド)へ降り立った調査隊。最後の一つは、その世界(ワールド)の原住民たち。
 この原住民たちの社会や風習がこれといった説明無しに突然語られるので、序盤はかなり戸惑ってしまった。幸いにも「ベガーズ・イン・スペイン」にこれの短編版ともいうべき作品が収録されていて、そちらを先に読んでいたおかげでかなり助かった。その原住民たちは、遺伝的形質か宗教的・文化的伝統かはわからないが、「共通現実」という社会通念の元に生きている。「空気を読む」という現象を、生理的強迫観念にまで推し進めたようなもので、この共通現実を感じることができない者は不具者として扱われる、というような社会。しかしこの共通現実のおかげで、彼らは戦争もなく持続的平和社会を営んでいる。
 そして、その世界でフォーラーとの戦況を一変する可能性を秘めた旧時代の遺構が発見され、その調査が秘密裏に開始される。
 300ページを超えたあたりから一気に見晴らしがよくなって、そこからはかなり楽しんで読むことができた。最後の引きもかなりあっと言わせるもので、二巻が非常に楽しみ。とりあえず明日買ってこようと思う。
 もう少し詳細な感想は全三巻を読み終わってから書きます。