歴史的傑作、だと思うんだけど、どうでしょう

鋼鉄のワルキューレ―ケーニヒスティーガーin WW2東部戦線(オストフロント)

鋼鉄のワルキューレ―ケーニヒスティーガーin WW2東部戦線(オストフロント)

第二次大戦末期の1944年11月、東部戦線の北部ポーランドに配置された少年兵レオンが所属するドイツ軍歩兵師団は、ソビエト戦車軍団の急襲によって壊滅。死の瀬戸際まで追いつめられたレオンを救ったのは、ドイツ最強の重戦車ケーニヒスティーガー中隊を率いる、美貌の女性中尉フリーデだった。一方、ソビエト戦車軍団の撃破王であるヒョードルは、味方戦車の残骸から、この敵が少数ではあっても容易ならざる戦力であることに気づく。フリーデとヒョードル、二人の卓越した戦車指揮官による死闘がここに始まった…。第14回歴史群像大賞最優秀賞受賞作。

 記事のタイトルは、架空戦記をそれほど読んでいるわけではないので、ちょっと自信がないから。だけど、これはただならぬ傑作だと思う。
 ケーニヒスティーガーを駆る美女。それを迎え撃つソ連の撃破王。轟く戦火の轟音。泥沼の撤退戦で、次々と失われていく命。それらは決してヒロイックではなく、戦争の虚しさ、現実を冷徹な筆致で描いていく。
 戦車戦はかなり「リアル」に書かれているんじゃないだろうか。いや、当然私は従軍したことも戦車が動くのを生で見たこともないんだけど、読んでいてなるほど、と唸らされた。フリーデとヒョードルの読み合いなど、架空戦記ならではの息の詰まるような展開は読んでいて本当に面白かった。
 作者の平和への願いも随所に込められていて、特に最終章のレオンのくだりはじーんと涙が出そうだった。うーん、なんだかとりとめのない感想になってしまったな。でも、本当に面白かったんですよ。
 学研からの、それもハードカバーの架空戦記とあって、あっという間に品切れ・絶版になる恐れがある。なので、気になる人は今のうちに買って読むように。五年後に「あの幻の名作」と言われてから読みたくなっても遅いのだ。