子供が大人になるまでを描いた真っ当な青春小説

とらドラ!〈9〉 (電撃文庫)

とらドラ!〈9〉 (電撃文庫)

 最近レンタル屋で借りたDVDの一巻があまりに面白かったので、五巻以降積ん読になっていたとらドラ!を一気読みした。
 結論から言えば、六巻以降こんなに面白くなるんなら、もっと早くから読んでおけば良かったよ。
 ああ、なんか凄く真っ当な青春小説だった。アニメも面白かったけど、実写で演技派を揃えればもっと面白くなるんじゃないかしら。
 父親にネグレクトされたことがトラウマになっている偏屈少女大河と、そもそも父親のいない少年竜司の恋愛物語。大河は父親を求め、竜司はそのコンプレックスから自分が父親を演じる。途中までは、大河が北村とくっついて、竜司が実乃梨とくっついて、それぞれ親離れ子離れをして歪んだ関係を解消、二人が親の呪縛から解き放たれる、というラストを予想していたんだけど、八巻あたりからその予想は外れ始める。私が思っていたより竜司は全然子供だった。四巻まではラノベのテンプレ的な達観したキャラ(読者の代弁者)として書かれていたんで、六巻以降こうなるとは全然予想していなかった。
 竜司は何かにつけて達観しているように見えて、実は一番ガキなんだろうな、多分。自分がしっかりしていると思い込んでいて、回りにも自分を理解するように求める。実際かなりしっかりしているせいで、その綻びはなかなか見えない。そして、その綻びが一気に出たのが9巻のラスト。その反面、一番大人なのは実乃梨。全ての空気を読んで、自分の心を押し隠した上で道化役を演じている。正直実乃梨みたいな女子高生はまずいないだろうなあ。精神年齢がかなり高めに設定されすぎな気がする。
 何はともあれ、北村、実乃梨の二人は恋愛レースから脱落。後は亜美の決着がどう付くのか。最後は大河と竜司がくっつくんだろうけど、亜美のおそらく竜司への恋愛感情だけはしっかりと決着を付けて欲しい。
 いや、個人的には一番好きなんですよ。名前が亜美だし。多分一番情に厚いいい女は亜美だと思うんだけどなあ。