著者の嬉しそうな顔が浮かぶ
- 作者: 島田雅彦
- 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
- 発売日: 2008/12/10
- メディア: 新書
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というわけでこの本だが、一応新書の体はしているが、ほとんど島田雅彦氏の酒にまつわるエッセイ集と言って良い。はっきり言って書かれている情報にはそんなに価値はない。ただ、お酒について嬉しそうに語る著者の顔がページの向に浮かんできて、同じ酒道楽の身としては非常に楽しくなった。
たとえば、午後三時半。その日の仕事が片付き、ポッカリと時間が空いたとする。 p.9より引用
まず書き出しからこれである。この時点で多くの人にとってこの本が役に立たないことが分かる(笑)。平日の三時半なんて、腐れ学生の私でさえそんな時間からは飲まない。ほかにも様々な名言が飛び出していく。
- 『あの頃は、酒場に喧嘩を奉納しにいくような雰囲気がありました』(太字の部分も原文ママ)
- 『ずっしり重い酒でメランコリーの海に沈むべし』
- 『酔うことと、頭が冴えていることは矛盾しない」
- 『令嬢こそ掃き溜めが似合う。令嬢こそ北区の酒場につれていかないといけない』
- 『説教をしにキャバクラに行く』
- 『さあ、これからは酔っぱらいになる時間だ』
- 『私は水と妄想でできている』
- 『イラン人は、実はこっそりと家で飲んでいる』
- 『ウイグルで美女を眺め、羊肉を食らい、白酒をあおる」
- 『アイルランドでは、シングル・モルトを飲む時はほら話をしてもいいというローカル・ルールがある』
- 『茶に「野点」があるごとく、自由な「野酒」があってもおかしなことではない』
まさに、このように名言迷言珍言のオンパレードだ。当然同意出来るものもそうでないものもあるが、何よりも本人が楽しそうに書いているのが文面からも分かる。この人は、お酒も自分の流儀も大好きなのだ。そして、この人とは絶対に楽しくお酒を飲める。
この書いてあることよりも、書いている本人に対する親しみから感じる楽しさ。どこかで似たような本を読んだことがある気がする、と思っていたら、北方謙三先生の人生相談集が多分そうだったことを思い出した。。