空の境界を観た

レンタル屋に行ったら3巻までレンタルしていたので観た。一応帰省したときなど、東京の映画館でも観ているので、それ以来の鑑賞となる。ちなみに視聴環境はプロジェクター+5.1chサラウンドシステムのホームシアター。学部生最後の年にがむしゃらにバイトして買いそろえた、貧乏アパート唯一の贅沢品である。
原作は同人版、講談社ノベルス版、講談社文庫版と版を変える度に読んでいて、まあ大ファンと言っても良いのでは無かろうか。ただ、「面白いか」と聞かれると、おそらくは「たいして」と気のない返事をするであろう。「好きか」と聞かれたら、「大好き」と答えると思う。まあ、そういった距離感を持っての、“大ファン”なのだ。
今回再び観てみて、やはりこれは式と黒桐君の、二人の恋愛物語だなあ、と思った。
黒桐君は腐れ文系男子なので、おそらくは「この馬鹿な女を、抱く以外の方法で愛する術は無いものだろうか」と、大槻ケンヂ的なことを考えていて、その結果たどり着いた結論が「何があろうと式を信じる」なのだろう。
対する式ちゃんは馬鹿な女なので、信じられていることを信じることが出来ずに、結局は抱かれるのを待っているのだろう。この辺に、この男女の仲がイマイチ進展しない原因がある。とはいえ、男が女の部屋に泊まってアイスを食べるだけとはとてもだが考えられないので、やることはやっているんだろうが。
しかし、この二人の肉体関係を匂わせない恋愛関係が、原作を読んでいてもアニメを観ていても、非常に居心地が良いのだ。正直原作は冗長な文章に分かりにくい構成と、テキスト的には全く褒められたものではないのだが、何が好きかと聞かれたら、この二人の関係性が大好きなのだろう。
しかしまあ、「そこはお前抱きしめてやれよ」と画面に対し何度思ったことか。まあ、本当に抱きしめてしまったらこの物語そのものが終わってしまうんだけど。
後、式の和服姿に関して一つ。式は男物の単を対丈*1で着て、寒い時期は上からジャケットを羽織っている、という設定なんだけど、原作を読んだときは「袖はどうしてんだよ?」と突っ込みを入れていました。おそらくは作者の和服に関する無知によるミスなんだけど、アニメでは袖丈の短いきものを着ています。あれだけ短ければ、無理矢理上からジャケットを羽織ることも出来るでしょう。ちなみに、帯は細めの半幅帯をシンプルに小さい結び目で結んでます。女物にしては細いですが、貝の口で結んでいるところを見ると、男物の兵児帯というわけでもなさそうです。きっと何かの余り布*2で特別に仕立てたんでしょう。若い女性がする分には現代的でそれほど変ではない着こなしだと思います。黒桐君もせめて帯くらいは褒めてあげればいいのに!
あ、そうだ。アニメとしては非常に出来がよいです。原作を読んで、あのへたくそな日本語に挫折してしまった人にもオススメです。

劇場版「空の境界」 俯瞰風景 【通常版】 [DVD]

劇場版「空の境界」 俯瞰風景 【通常版】 [DVD]

劇場版「空の境界」 殺人考察(前) 【通常版】 [DVD]

劇場版「空の境界」 殺人考察(前) 【通常版】 [DVD]

劇場版「空の境界」 痛覚残留 【通常版】 [DVD]

劇場版「空の境界」 痛覚残留 【通常版】 [DVD]

*1:お端折りを作らずに着ること

*2:何年か前、バザーで昔の丸帯を袋帯と半幅帯に仕立て直した物を売っているお婆さんを見かけたことがあります。