水惑星年代記 月娘

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普段は書影と書誌データはアマゾンから引っ張ってくるのですが、まだ画像がアップされていなかったので楽天からです。
水惑星年代記もこれで最終刊です。あー、もっと読んでいたかった。本屋でアワーズをチェックする理由がまた一つ減ってしまった。
今まで連作短編という形を取ってきた水惑星年代記ですが、今回は一冊で一つのお話、長編物です。感覚としてはハインラインの未来記、あんな感じです。あるときは短編集、あるときは長編。ほがらかな望郷の思いとともに語られる、大きな宇宙と科学冒険譚。あと少しだけ青春。羽ばたけ若人よ、あの大きな宇宙(そら)へ。
しかし、大石まさるの良さが最大限に発揮された作品だったんじゃないでしょうか。大石まさるというのは作品ごとに意図的に絵柄やタッチを変える人なんですが、その器用さが連作短編という形式にマッチしていたように思います。何巻かは忘れましたが、「りんちゃんシリーズ」のキャラが登場したときに、その当時の絵柄がそのまま再現されていたときは、昔読んだ絵本を図書館で読み返すような、そんな懐かしささえありました。

五冊目に当たる「碧水惑星年代記」までは静かに変容していく地球で、それでもしぶとく大地にへばりつき、そして再び宇宙を目指していく人類を描いてきましたが、今回の「月娘(るーにゃん)」はその宇宙に進出した人類の三世であるヨミコ・ブラックが主人公。月に進出した人類は、新たなフロンティア、火星へと歩みをすすめていきます。
そしてその過程で描かれる生命のしぶとさ、力強さ、愛おしさ。宇宙進出を華々しく描くことで、最後は生命賛歌へとテーマが収束していく。なんか読んでいて凄く懐かしい気持ちになってしまった。最近こういうSFを読んでなかったなあ。

少年画報社の単行本はすぐに品切れ・絶版になりますし、なかなか復刻もしないので、早いうちに買っておくことをお薦めします。いやー、本当に面白いシリーズでした。